恋をしたまま命を終えられたい。忍ばれたまま命を終えられたい。[200/1000]
ただ透明になりたくて、殺してくれと神に乞う。 冷気の刃は体を貫き、心が綻んでいく先に、深い安堵を感じている。 生と死を繰り返す大きな呼吸の中にいて、あなたの呼吸を感じさせてくれと、 小さく祈りを捧げている。 …
ただ透明になりたくて、殺してくれと神に乞う。 冷気の刃は体を貫き、心が綻んでいく先に、深い安堵を感じている。 生と死を繰り返す大きな呼吸の中にいて、あなたの呼吸を感じさせてくれと、 小さく祈りを捧げている。 …
正月の余熱もすっかり冷めて、世間は少しずつ平常運転に戻っていく。賑やかな時の後に訪れる寂しさは慣れないが、次の祭事までのチャージ期間である。感情を自分のものにしようとすればおかしくなるので、ただ透明になられたい。喜びも寂…
物置小屋と塀をつくり終え、入れ替わるように仕事が再開する。仕事は好きな場所で自由にやらせてもらっている代わりに、頭だけ動いて身体は置いてきぼりになりがちである。 頭で考えず言われるがままに肉体労働をすれば奴隷のような苦痛…
母に頼まれ年末年始をかけてつくっていた物置小屋と塀が完成し、ひと仕事を終えた。物置小屋は0.6m×1m×1.8mの小さなもの、塀は高さ1.8m×長さ9.6mで、一緒につくった兄にとっても私にとっても大作であった。素人がつ…
小学生くらいの頃は正月が一年でいちばん大きな楽しみで、正月が過ぎれば次の正月はまた一年後か、と思うくらい正月を楽しみに生きていた。それほど正月が好きだった理由を今言葉にしてみると、正月が垂直性のある時間だからだった。祖父…
明けましておめでとう。 原付を5分ほど走らせ、山へ行き、お天道様を拝むことにした。朝5時半。山頂には、初日の出を見ようと既に人が何人かいた。隅の方の地べたに腰を下ろし、魔法瓶に入れてきた白湯をちょびちょび飲みながら、日の…
今年が静かに終わろうとしている。 朝、上裸になって庭に出ると少しヒンヤリとしたが、耐えられないほどの寒さではなかった。庭の水道をひねって風呂場から持ってきた洗面器に水を汲み、後ろの首元めがけて水をぶっかける。これを三度繰…
母に頼まれ、3日がかりでつくっていた物置小屋が完成した。これでひとまず落ち着いた年末を迎えられると思いたいところだが、明日から塀づくりが始まる。自分の時間はないが、自分を奉げる時間はある。こうして身を捧げていると、長いこ…
古風を好む今は、畳の上でこたつに入り、みかんでも食べながら静かな正月を過ごしたいと思うが、母はイギリスに強い憧れをもっており、実家は西洋風で畳はない。ガーデニングを趣味とする母が、庭にオブジェになるような物置小屋と隣家と…
こうなることは分かっていた。最低限の物と最小限の便利さの中で生きていると、必要以上に物を持つことや、必要以上に快適な場所で暮らすことに居心地の悪さをおぼえるようになる。肉体は楽ではあるが、物が増え、便利になるほどに、魂が…