御国のためと喜んで金を差し出せたらどれだけ仕合せなことだろう。[970/1000]
理想主義といふのは、決して現実を遊離したもんぢやなくてね、人間性の現実なんだ。理想を持ち、それに殉じて死ぬといふことも本能なんだ。それをあたかも生命欲だけが本能であつて、それに殉じて死ぬといふことが本能に反するものだと思…
理想主義といふのは、決して現実を遊離したもんぢやなくてね、人間性の現実なんだ。理想を持ち、それに殉じて死ぬといふことも本能なんだ。それをあたかも生命欲だけが本能であつて、それに殉じて死ぬといふことが本能に反するものだと思…
あかるい炎よ、お前のなつかしい、人生を映す、身ぢかな同情は わたしに拒まれてはならない、 わたしの希望のほかの何がそんなに燃えさかったであろうか、 わたしの運命以外の何がそんなに夜、消えしずんだであろうか なぜお前はわれ…
エピメテウスはすべての動物に、勇氣や、力や、早さや、智慧などの賜物をさずけました。或る者は翼を、或る者は蹄を、或る者は身を隠すための殻を貰い出しました。ところが萬物の霊長たるべき人間の番になると、他の動物に何もかもあたえ…
家が温かい。夜を温かく過ごすことができる。大袈裟に聞こえるだろうが、私はこの日というこの日を、何年も願い続けてきたのだ。 二十代の始め、教師失格となってからは、野良犬のような生活をした。原付にテントを積んで…
静寂のときを見計らい、神は人間に語りかける。飢えるときを待ち望み、魂は発露する。神を持たぬ者、魂を蔑ろにする者は、静寂を怖れ、空腹を忌み嫌う。何の値打ちもない喧噪に身を窶し、何の為にもならない物体を胃袋に放り込む。耳は品…
懺悔は済んだ。これ以上、過去を悔いるのはよそう。砕け散らばった記憶の断片が、一つ、また一つと再集結し、心を形成していく。その中でもひときわ輝くのが、復讐の根源となる深い傷、それから成就しなかった淡い恋。本意でなくとも、結…
朝陽が昇りはじめてから、夜眠るまで、途切れることのない永遠の孤独へ帰っていこう。虚偽はなし、欺瞞もなし。後ろめたいことも何もなし。わが魂を散々苦しめた地上の鎖は引き裂かれ、空腹となった胃袋の底へ流体と化したエネルギーが流…
僕は二十歳だった。それが人生でもっとも美しいときだなんて誰にも言わせない。 ポール・ニーザン ついに新しくつくった森の家で初夜を迎える。できることなら、完全に完成してから、新たな気持ちで住み始めたいところだったが、ここの…
僕はもう年齢を取らない。到頭僕は死んで仕舞った。僕は毎日種種(いろん)な祈禱の声を持って居る。この快活な魂が輝いて、僕の灰は温かい。 北村初雄「一生」 凍え震える身と魂が、日に日に窶れ、老いていく虚しさに眠れど、 ねぐら…
おお、孤独よ。あなたはわが故郷だ、孤独よ。あなたの声はどんなに幸せに、どんなに優しく私に語りかけてくれることか。 ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」 雪の世界に閉ざされると生きるか死ぬかの戦いになる。だが、森から一…