陰極まれば陽に転ずる。[881/1000]
太陽が沈むと、再び太陽が昇るまで、世界は熱を失いつづける。もし、翌日太陽が昇らなければ気温はさらに下降し、氷点下にすぐに到達してしまう。人間の体温も同じで、断続的に低温にさらされつづけることのほうが、局所的な極寒よりもず…
太陽が沈むと、再び太陽が昇るまで、世界は熱を失いつづける。もし、翌日太陽が昇らなければ気温はさらに下降し、氷点下にすぐに到達してしまう。人間の体温も同じで、断続的に低温にさらされつづけることのほうが、局所的な極寒よりもず…
板倉工法なる家づくりがあるらしい。伊勢神宮や正倉院にも用いられる伝統的な工法だ。120角の桧を柱とし、厚さ30ミリの杉板を、柱に掘られた溝に沿わせて落とし込んでいく。床、壁、天井のすべてに、厚手の杉板を用いるのが特徴で、…
2024年11月15日。狩猟解禁日だ。今日という日を待ちわびた全国の猟師たちが、一斉に山へと潜り込む。早ければ今晩にも、ジビエ料理が夕飯を賑わすことだろう。一年前の今日、猟師になることを夢に見た。一年後の今日は山に入るか…
長距離型の人間と、短距離型の人間では、エネルギーの出力方式が異なる。前者は安定したエネルギー出力を得意とし、後者はエネルギーを最大出力を得意とする。どちらも一長一短であるが、時と場合により、エネルギーの扱いを分けられる人…
己の命が誰から与えられたものかを考えれば、己の命を何のために捧げればよいかは自ずと見えてくる。毎日を楽なように過ごし、力を持て余して眠ることが生命的に正しく、へとへとになるまで働ききることが生命的に間違っているとは到底思…
尽きぬ悪意に気圧されると、金で安堵を得ようとする。そうして文明に堕落していく安逸を、どれほど恥じて、悔いるだろう。ハンス・カストルプは、無力のために煙草をふかし、力を得るのだと戯ける余裕をみせた。それが、弱い心を持つ人間…
17時に日が暮れる。森は静まり返り、完全な闇に包まれると、夜の獣は痛々しい啼き声で、何かを叫び始める。街では習い事を終えた小学生が帰路につく時間であるが、闇に身を沈めていると、生命は活動を終え、眠りにつく準備をはじめよう…
不甲斐ない。もらう金の分すら、仕事もできんのか。重機を詰まらせ、手鎌を折り、まったく不甲斐ない働きぶりだった。そんなことを考える己のケツを豪快に蹴り上げようとする力と、温かく慰めようとする力が、心の奥底に同時に迫ってくる…
あの永遠の苦行と思われた、穴掘りと砕石埋めも、気づけばすべてが終わっていた。気づけば、森にうつくしいヒノキの角材が運びこまれ、何ともいえぬ感動におそわれた。まったく、”自分で”時を歩んでいる認識を…
冬の訪れは、どうしてこうも怖いのだろう。だが、生きるために戦わねば。身体に燃えるちいさな火を絶やすことなく、薪をくべて燃やしあげねば。 まったく、愛するとは、己の熱を他人に差し出すことにちがいない。ちいさな炎は、別の炎の…