百姓という言葉には庶民ながらも立派に生きる人間としての矜持がある。[985/1000]
友人の新聞記者が、社内のワープロでうっかり「百姓」と入力しようとしたところ、「次の言葉に言い換えなさい」と警告が出て、農家、農業者、農業経営者、農民などの言葉が例示されると言う。事態はここまで来ているのである。 宇根豊「…
友人の新聞記者が、社内のワープロでうっかり「百姓」と入力しようとしたところ、「次の言葉に言い換えなさい」と警告が出て、農家、農業者、農業経営者、農民などの言葉が例示されると言う。事態はここまで来ているのである。 宇根豊「…
物質社会を悪者にして、自分の弱さを棚にあげたくはないが、肉体を肥やすだけで何の矜持も持ち得ない仕事に、この身は死することができぬのだ。金のために魂を悶絶させることを強く拒絶するのだ。 そんなつまらぬ意地を張っているから、…
われわれは自分の体が本当に欲しているものを、的確に言い当てることができるだろうか。精神的な事柄から、物質的な事柄まで。たとえば、アイスクリームが食べたいと思うとき、体は蓄熱された熱を放出したいだけではなかろうか。もしくは…
中村天風先生の書物をひらくと「積極一貫」の筆書きに出会う。「積極一貫」は、いかなるときも積極的であれという絶対積極の精神を言う。これまた見事な四字熟語で言い表したものだと、私はとても有難い心持になる。一貫は、初めから終わ…
新聞配達二日目。今朝も三時に出勤し新聞を投函する。昼間の間に配達ルートを反復していたこともあり、概ね配達する家は把握できた。 一般的に、新聞配達には「配達記号」なるものが使われており、地図がなくとも記号だけで配達する家が…
母から仕事はどうなったかと連絡がきた。「今日から新聞配達をしています」と伝えると「何でもよいよ。働くことが大事です。」と返信がきた。そのとおりである。いい母を持ったと涙を禁じ得ない。私は二十代半ば、働かず家に引きこもる時…
造物主はどんな悪人といえども、この世に生きているかぎりは、その人間の生命の火を寿命の続くかぎりは燃やしてやろうという尊い思召しをもっていられる。 (中略) だから夜の寝際はもっときれいな気持ちにおなんなさい。もう、世界一…
まだまだ前夜だ。流れ入る生気とまことの恩情とは、すべて受けよう。暁が来たら俺たちは、燃え上がる忍辱の鎧を着て、光かがやく街々に入ろう。 ランボオ「地獄の季節」 履歴書に書き並べられた文字列が何とも惨たらしい。こんな紙切れ…
新聞配達の仕事に有りつけそうだ。とはいっても、まだ面談すらこれからなのだが。単なる期待感にすぎぬ。こう言っちゃ新聞屋さんに失礼かもしれないが、早朝とも深夜ともいえない時間帯からはじまる新聞配達の仕事は、金によほど困ってい…
車検を受ける金がない。ならばいっそ車を手放してしまおうとも考えたが、春になれば畑で働くための足がいる。そうでなくとも水を汲むためには車が必要である。働けそうな仕事を探して、山荘という所へ面接に行ったが、山荘というわりには…