目指すところは宇宙の果て[375/1000]

7月からの家づくりに備えて、森で寝泊まりをしているが、ここ数日、森に変な臭いがして困っていた。なんだか硫黄っぽいような明らかな悪臭である。すぐになくなるだろうとあまり気にしていなかったが、あまりにも続くものだから、原因を調査するために犬のようにかぎ分けて、においを辿っていくと、近くの広大な畑の一画から生まれていることが分かった。原因は定かではないが、水はけの悪いところに農薬がたまり、そこから継続的な臭いが発生しているようだった。服にも体にも染みつくほどの強烈な臭いで、昨日は偏頭痛に苦しめられるほどだった。身体が弱り、心が消極的になると、どうしても厭世的になりやすく「やっぱりもっと山奥に住むことにしたほうがよかったのかな」などと弱気な考えも浮かぶものだが、どこに行っても不満はつきまとうのだし、やれるだけのことはやらねばならないと気を強く持ち直すのだった。今日、最優先事項として農家の人に相談しに行く予定である。

 

苦しみの裏側に、歓びがある。原因解明のために、あちらこちらを歩き回るうちに日が暮れてしまった。誰もいない田畑の道を歩きながら、広大な山に沈んでいく美しい太陽に見とれていた。太陽が沈んだ後、森は怖ろしいほど真っ暗になる。そこを一人歩いて帰るのは少し心細いが、スギの隙間から差し込む月光が、とても明るく感じられた。適当な場所を腰を下ろし、しばらく月を眺めていると、昔も今と同じように月と語り合った晩を思い出した。あの頃の念願は形となり、もうすぐ森に家を建てるのである。そんなことを感慨深く思っていると、ホタルが一匹、点滅しながらフワフワと宙を舞って、2,3度舞うとそのまま茂みの方へ消えていった。今日出会ったすべては、なにもかもが偶然であった。きっと物事は、いい方向に前に進んでいくであろう。何もかも、その鍵となるのは、やっぱり心の持ちよう一つだけなのである。宇宙の力を授かり、心を積極的に、自然のままにすることだけなのである。

 

さて、仕事のほうも昨日で山場を越え、いよいよ今日が最終日となった。このまま駆け抜けていくのである。なぜなら、目指すところは今日の終わりではなく、ずっとずっと遠い彼方へとつづく宇宙の果てだからである。

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