労働にいそしむ日がつづく。森の家づくりも基礎工事にはいった。穴掘り、砕石運び、転圧、家づくりのなかで最も過酷な場面である。玄米と野菜、それから肉をしっかり食って精を養う。肉体労働者にとって食事は命である。一日一食しか食わない私も、二食食うようになった。米が美味い。米の力が余すことなく肉体に流れ込んでくる。
だが、疲弊した肉体を最も癒すのは音楽である。毎日ベートーヴェンを聴く。その度、涙が流れる。どれだけ立派に生活者を演じても、おれの帰る場所はここなのだと認識する。毎日のように寒く、傷を負って痛い思いをすることも、労働に斃れることも、そんなことはどうでもいい。精神は肉体を置き去りにしてどこまでも先を行く。遠く遠くを目指して、傷だらけの身体を誇りにしている。
このまま死ぬことを男は望む。だが、死なずに生かされるのは女のおかげだ。男は基本、捨て身でいい。そうでなくては。己を投げ捨てた先、遠い遠い先から、熱いものに救われる。私にとっての音楽とはそんなものなのだ。
2024.10.14