「幸せです」と言わされていないかい。[311/1000]
薪がパチパチ燃える音と、木々が風に揺れて、木の葉が擦れる音しか聞こえない、そんな深い夜の静寂を心から待ち望んでいるのに、日が暮れようとする夕方はどうも苦手だ。いったい今日、なにができたのだろうと考えると、また一日を無駄に…
薪がパチパチ燃える音と、木々が風に揺れて、木の葉が擦れる音しか聞こえない、そんな深い夜の静寂を心から待ち望んでいるのに、日が暮れようとする夕方はどうも苦手だ。いったい今日、なにができたのだろうと考えると、また一日を無駄に…
染井吉野が散ったのがはるか昔のようで、名の知れない桜たちも、やっと花びらを落とし始めた。君たちを見る人間は多くはないけれど、足元でどんちゃん騒ぎをされない分、実は幸せなのかもしれない。雨風に揺られて落とすその花びらは、き…
男湯と女湯が壁一枚で隔てられているような古くさい風呂屋が好きである。時刻は昼過ぎ、番台のおばちゃんに400円を渡していちばん風呂をいただこうとしていると、スキンヘッドのおじさんが入ってくる。ここの風呂屋は備え付けのシャン…
感謝、笑顔、幸せに、沈みゆく生命の 心臓を鷲づかみにして引きずり出す。 満たされているようで、満たされていない、 嘘と本当にまみれた泥だらけの魂は この荒野の荒々しさに驚いているか。 凍てつく風に傷つけられ、 孤独な月に…
親孝行。近くにあるようで遠いもの。砂漠に現れる蜃気楼のように、どこまでもどこまでも、遠ざかってしまうようだ。親を安心させてやりたいが、生命は幸せの杯を退け、不幸の炎に突き進もうとばかりする。こうしていつか親孝行しなくちゃ…
「ではどうして今、メッカに行かないのですか?」と少年がたずねた。 「メッカのことを思うことが、わしを生きながらえさせてくれるからさ、そのおかげでわしは、まったく同じ毎日をくり返していられるのだよ。たなに並ぶもの言わぬクリ…
「自分自身の武士道、自分自身の天皇をあみだすためには、人は正しく堕ちる道を堕ちきることが必要なのだ。」と坂口安吾は言う。 山林を探しながら、悪い方ばかりに流れている気がする。最初は人里から少し入った森林を探していた。しか…
あれもほしい、これもほしいと、気づかぬところで欲望は膨らんでいく。いったい弁えというものは、どこへ行ってしまったのだ。 山林探しは難航する。第一に、自分が傲慢で、汚らしい欲望にまみれているからである。日陰と…
いつまでも心に勇気を与え続けてくれるのは、苦労した旅の記憶だ。金はなくても、足りない分は根性と気概で補った。そうして絞り出された根性や気概は、記憶に青春の味を与え、結果として自己を永遠に結びつける働きをした。 心に活力を…
この世界には道徳を破り、法を侵した人間もたくさんいる。生れながらの宿命で、犯罪に染まらざるを得なかった人間は、どんなに不幸でどんなにクズだろう。社会によって裁かれなければいけないけど、もし罪の痛みを自覚するなら、君は誰よ…