この時代を生きる悩みをもつことの幸せ[150/1000]

普遍的な価値を追求する人間において、時代の悩みはいつの時にもあるものだと思う。

「昔は」とか「今の時代は」とか、時代への不平不満など探そうと思えばいくらでも見つかる。でもこの時代に生まれたことを宿命として受け入れなければ人生は亡霊のようになっちゃう。苦悩に侵されてもいいから、地に足を着けなければならない。宿命の上にしか生を全うする道はない。

 

新渡戸稲造の「武士道」を読みながら、武士道の普遍的価値を再確認している。「世界に武士道ほど宗教と同列の資格をあたえられた道徳体系はない」と新渡戸稲造が言うように、日本人にとっては武士道は魂を貫ける一本の支柱だった。

1876年に廃刀令が公布されて武士階級がなくなった時、当時、崇高な魂に生きていた人達は、失われていく武士道をどのような気持ちで見つめていたのだろう。人間の魂が徐々に失われ、狡猾な人間が世間の注目を浴びるようになる。そんな世界を虚しさの中ただ眺めるというのは、魂が完全に失われた世界よりも残酷だったのではないだろうか。死んでいる人間は死んでいることに気づかないが、生きている人間には死にゆく苦しさがある。

 

昨日も「現代人の苦悩に苛まれる」という言葉を使ったが、そんなものは所詮は言い訳にすぎないと思い直した。作家の岬龍一郎は「いつの時代にあっても本能は美学よりも強く、理想は現実の前に打ち砕かれるのが世の習いである。」と言った。武士が生きていた時代でさえ、武士道を貫くことは困難を極めたから、武士は民衆から尊敬の念を獲得していたのだ。

 

殉教や殉死するほどの高貴な魂には、物質主義に汚染された私は、同じ人間だとは思えない崇高な畏れを感じている。しかし彼らも肉体を抱える人間である以上、本能と闘い、自己の死について深く対峙する道は避けられなかったはずだ。

時代によって、生きやすさは確かに存在するかもしれないが、いつの時代も障壁は必ず存在し、「時代のせいだ」と言って逃げの道をつくる臆病者もいたのだと思う。

 

ここで葉隠の言葉「同じ人間誰に劣り申すや」が思い出される。これは「価値を追求するのに時代は関係ない。時代のせいにしたくなる瞬間は必ず訪れるが、そこで挫ければ武士道は貫徹できない。」というメッセージなんじゃないかと思う。いつの時も、魂の価値を追う道は困難を極め、時代に甘んじて逃げる風潮はあったんじゃないかな。

これは「大きな悩み」だといえる。大きな悩みは時代を超えて、古今東西、すべての人類に等しく降りかかる悩みで、いつも時代との間に葛藤を生み出す。自分の悩みでもあり、人間としての悩みでもあり、人類としての悩みでもある。

これを背負おうとすると、俗世の悩みが小さくて取るに足らないような気持ちになるのは、この大きな悩みを背負う覚悟と一緒に、かつてこの苦悩を生きた人類のエネルギーの束を分けてもらっているからではないだろうか。

 

今の日本は宗教という言葉を聞くだけで拒絶反応を起こし、そもそも魂と出会う前に門前払いされる印象があるが、そんなことは重要ではなく、この時代に人間として生をもった宿命だけがある。

現代人らしく無様に苦悩しながら、やれるところまでやってみればいいんじゃないかな。

 

精神修養 #60 (2h/128h)

朝から仕事のことばかり湧き続けてくる。朝晩の瞑想の時間は、一切の現世的な思考を放棄し、魂について考える時間や、神と対話するような神聖な時間にしたいと思うが、現世を生きる肉体の上で瞑想を行っている以上、それは理想にすぎないのかもしれない。

現世的な思考の背景に、損得勘定に縛られている自分を見つけている。毎朝と毎夕、瞑想をしていても、日々労働をする中で現世的な感覚が心に染みついていく。

おそらくこれは過去の人間も同じで、だから日曜日には安息日が設けられ、一切の労働から解放される時間を必要としたのだろう。大きな悩みは、いつも同じで、言い換えれば人類の悩みなのかもしれない。

 

[夕の瞑想]

痛みを自分の一部だと思うと、忌み嫌っていた感覚さえも愛おしく思えるのは不思議だ。

昨夕と同じように足に激痛が襲い、痛みを自分から切り離そうと肉体がもがいていることに気づく。静観を心掛けながら、人間は毒を取り入れることで強くなるという話を思い出す。この痛みは、毒そのものではないか。

痛みを自己の内に取り込むことで精神修養の肥やしになっていくと思うと、この痛みさえも愛おしく思えるのだった。

反射的に生きれば、毒を常に身体から退けようとする。毒が強すぎれば肉体はそのまま死滅してしまうかもしれないが、また一切の毒なしに魂の鍛錬はないということを心に留めておこう。

【0円で生きていける拠点づくり】

森の中に瞑想小屋を建て、家を開放するのが直近にやりたいことです。

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