いっちょ前に男を演じる。[470/1000]
失ってはじめて大切なものだったと気づく。それが愛情であったのなら、なおさらのことである。突然の別れに気持ちの整理もつかぬまま、しかし、これでいいと本当は知っているのである。傷んだ心は放り出したまま、不器用に笑ってみせて、…
失ってはじめて大切なものだったと気づく。それが愛情であったのなら、なおさらのことである。突然の別れに気持ちの整理もつかぬまま、しかし、これでいいと本当は知っているのである。傷んだ心は放り出したまま、不器用に笑ってみせて、…
現代、虚無に苦しむ人間は少なくない。私もその一人で、20代の間は虚無を宿敵として生きてきた。生きることの虚ろに耐えきれず、情けない時間も長く過ごした。しかし、それでも虚無を突き破ろうと、見苦しくも抗いつづけるうちに、つい…
命の花がしぼんで枯れ落ちていく。老いと死の風に無防備に晒されて、寂しさとはただそこにたたずむものである。 森の暮らしに寂しさはあっても虚無はない。しかし、寂しさのためか、つい火を灯して、炎のなかに安らぎをみつけたくなる。…
森の家で過ごすこと2日目、夜中にふと目が覚める。窓の外は深い闇に包まれて何も見えないはずなのだが、なぜだか薄っすら木々が見える。はて、さては月のしわざだなと思い、足元を照らすランタンを片手にとって、夜の森に飛び出していく…
森の家で初めての夜を迎えた。とても寂しく、怖ろしい夜だったが、蝋燭に照らされた部屋は、夢心地のするほど美しく、霊妙さを感じられるものだった。自画自賛というわけではないが、改めてとんでもないものをつくってしまったとひとり感…
最後の窓の取り付けが終わり、ついに森の家が完成した。といっても、まだ最低限の生存機能を満たしたという意味での完成にすぎず、生活していくにはまだ手を加える必要がある。もらってきたペール缶を改造して、料理用のロケットコンロを…
森の家に扉がついた。明日、窓枠に窓を張っていけば、機能的な家としてすべて完成する。窓にも扉にも、鍵すらつける予定はないが、性善説を信じるというよりは、悪を犯す力をもちあわす人間と、悪を犯す必要に迫られた人間は、このような…
森の家づくりの最後の砦、扉づくりにとりかかったが、本日は気持ちのいいほどの敗北を喫した。これまでの経験をもとに、廃パレットを分解して、扉をつくるところまでは難なくこなした。問題は次である。ちょう番をつかい、扉と家を接続す…
毎日、書くことをして462日目。これといって書くことが思いつかない日には、見苦しくもつまらない私情を書き連ねたことも少なくないが、どうせなら、美しい言葉や、魂に響く言葉を写本したいと思った。そうすれば、私にとってもこれを…
森の家に、机と椅子ができた。今日は、その使用感の確認もかねて、森の家のなかから、つくりたての机と椅子で書いている。 椅子は、直径20cmくらいの切り株を立てたものに、座面の部分にだけ直径30cmくらいの薄い切り株をのせた…