信仰なしで生きるには過酷な世界に生きている[142/1000]

「生命の燃焼こそ私の魂が欲することだ、幸せだとか不幸だとかは、あくまでその過程に付随する結果に過ぎない。」

とはいいながらも、大きな虚しさに覆われ潰されそうになると、苦しみから逃れ、幸せにすがりたくなる。幸せを懇願し、満たされない心に光を当てながら、一方で苦悩が生命をジリジリと燃やす感覚に魂は「これでいい」と言う。

 

武士道は父性の塊のようなもので、それを内在化させると、ひたすら咆哮するような生き方が要求される。道はどこまでも男らしいが、女性的な優しさを渇望する自分がいる。母を思い、温かな友を思う。一緒に囲った鍋を思い出し、一緒に食らった肉を思い出す。

 

苦悩の中でも葉隠は男らしく「不仕合わせのときにくたぶるる者は益に立たざるなり」「大変に逢うては歓喜踊躍し勇み進べし」と言い放つ。優しさに包まれた柔らかい言葉はなく、どこまでも俺についてこいと言わんばかりに、葉隠魂のとてつもない大きな背中だけが見える。

苦悩の最中こそ、魂の鍛錬が為されていると考えたい。どこまでも孤独の戦いではあるが、今日この瞬間も、自己の運命に立ち向かう友を思い、今は鼓舞をしつづける。

 

精神修養 #52 (2h/112h)

零度の中の瞑想。肉体負荷が強いほど、瞑想は困難を伴う。

全身が冷え切っており指先が痛い。背は丸まり、身体は縮こまり、握る手も温かさを欲する。肉体に負荷がかかればかかるほど、肉体は生きようとする。この生存本能が働く間は、瞑想のことは忘れているが、この野性味を伴う感覚は苦痛ではあるが、いいものであると感じる。

同じ肉体感覚でも、ぬるま湯の快楽と、寒さを耐え忍ぶことでは、その質は180度変わる。楽に走るか、苦に走るか。

 

[夕の瞑想]

どうしようもない悲しみと、寂しさの中で神にすがる思いで瞑想に身をゆだねる。仕事をすればするほど、どうしようもない寂しさばかり募り孤独感が増していく。

寂しさに圧倒され、身体も疲弊していたことから、気づくと眠ってしまっていた。気力を失い、身体が倒れたことまではおぼえている。それから色んなことが内で起きていた気がするが、すべてが夢から醒めたように何も思い出せない。

色んな思考と感情がぐちゃぐちゃになりながら、何時間という時が経過したようで、実際は30分も経っていない、妙な感覚だけが残った。

 

自分の命が一番大切になれば、自己の内からは神は失われる。

どこの宗教にも属さない家庭に生まれた私は、日本ではよく見かける無宗教者として生きてきた。しかし、私は自分の内に神を感じていて「自分教だ」みたいなことを二十歳くらいの頃は言っていた覚えもある。これは自分=神という傲慢な考え方ではなく、自分の内に「何があっても絶対に大丈夫」という信仰の根源みたいなものがあったことを指す。

私はその根源に心を帰し勇気を貰いながら、命よりも大事な志に生きていた。志は、私を教員の道に導き、睡眠は可能な限り削り、週7日間のすべてを仕事に注いでいた。志は身体(命)よりも上位の存在だった。

 

しかし心身を壊した私は、3か月で教員を辞めることとなった。志よりも自分の命を優先してしまった。この頃から、私は自分の内に神を失ったような感覚をおぼえるようになった。無宗教でありながらも信仰の源を抱え、天と繋がっていた私は、切り離された感覚に完全に生きる方向性を見失い、鬱を繰り返した。

 

私は今、自分の内に神を欲している。信仰を欲している。それが精神に安定をもたらすということもあるが、魂に価値を置く生き方を貫こうと思えば、信仰の源なしには歩めないほどの厳しい道だと感じているからだ。天と繋がることの許された人間として、厳しさの中の愛や友情を見つけたい。

無宗教と無信仰は違う。無宗教でありながらも、自己の内に信仰の根源を持つ人間はいる。しかし、無信仰になれば天と繋がる重圧に耐えうることができず、肉体にすべてを委ねる水平的な生き方しかできなくなる。垂直的な生き方をしないのではなく、水平的な生き方しかできなくなるのだ。

 

先日見かけた、諏訪湖の畔で見かけた女性のことを思い出している。女性は三輪の花を両手で抱え、足を引きずりながら歩いていた。服装は質素で、脇目を振らずひたすら直進する女性からは悲壮感が漂い、お世辞にも幸せそうだとは言えなかった。

私が女性の美しさに目を奪われ、女性の存在から勇気を貰ったのは、女性の内側に信仰心を見つけたからだと思う。自分の命よりも大切なもののために生きる人間の崇高な美しさには永遠を感じるのはどうしてだろう。

 

 

今日も人目につく場所で、言葉を残す自己の虚栄心に恥を感じながら、今日を生きる友に何かしらの励みになることを祈る。

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