生の原理、死の原理②[562/1000]
仕事がなくとも、仕事をしろと言われる。書くことがなくとも、書けと言われる。こうした主客転倒を時に生み出す規律のなかでは、時間を克服できない人間の弱点が露出し、われわれは虚無に陥る。 主客転倒といえば、昨日も書いた、生の原…
仕事がなくとも、仕事をしろと言われる。書くことがなくとも、書けと言われる。こうした主客転倒を時に生み出す規律のなかでは、時間を克服できない人間の弱点が露出し、われわれは虚無に陥る。 主客転倒といえば、昨日も書いた、生の原…
隠遁中の三ヵ月は、色んな「主義」を言葉にした。エピクロスの東洋的快楽主義からはじまり、禁欲主義、神秘主義、民主主義、個人自由主義、耽美主義、ロマン主義、ヒューマニズムである人間主義、人文主義など、あげればキリがない。 &…
悲哀は高尚だ。なぜなら、悲哀は人間に祈りを要求するからである。天に身を捧ぐことを要求するからである。 明るいこと、楽しいことを、われわれは人に話す。明るいこと、楽しいことは、現世に帰る場所がある。だが、悲哀には帰る場所が…
貧しい時代の話はどうしてこうも泣けてくるのだろう。 先生は「これで好きな作文でも書きなさい」と言って、新聞紙に包んだノートを少年に差し出す。少年は「かあさんに叱られますから」と言って、何度も受取を辞退する。それでも先生が…
感情を整列させなければ、本は読めない。軍隊のように美しく感情を整列させ、号令一つで一斉に行進をするには、日頃の鍛錬がいる。 また、文章に人柄がにじみ出るのは、文章を書くにも、感情を整列させる必要があるからだ。  …
森にこもった三ヵ月を反省してみれば、とにかく書物にぶつかりつづけた日々だった。量も心掛けたが、何度も読み返すことを大切にした。その中でも特に影響を受けた本を、書きならべてみようと思う。 *** -トーマス・マン「魔の山」…
島崎藤村の「破戒」には、四民平等が宣言されたあとも、依然と差別がつづく「穢多」の素性を隠して生きる教員の苦悩が描かれる。穢多であることを絶対に言うなという父の戒めを破るため、破戒である。 新平民として素性がばれれば、教員…
満たねば困窮、満ちれば退屈。 これは、ショーペンハウアーが提示する、救われようのない人間の性である。海からやってくるさざ波のようなものだ。海浜に満つさざ波は、次の瞬間には、海へと引き返し、一瞬たりとも満ちたりた状態でとま…
労働は国民の国家に対する義務である。これは間違いない。そして、古典的習慣によって脳髄の力を強化し、感情の力をもって人生にぶつかり味わい尽くすことは、己の肉体を生んだ親に対する義務、また人間という存在を創造した神に対する義…
朝いちばん、誰もいない教会に足を運んだ。ミサがはじまるまで1時間以上もある。 こうして朝一で教会に来たのは、だれもいない聖堂の空気を満喫したかったからというのが、第一の理由であり、教会のなかで身を温かくして待っていようと…