絶対積極と相対積極の違い。絶対積極の精神とは[215/1000]

中村天風という人間に心惹かれるのは、風貌から漂う雰囲気や発する言葉の内側に生死を感じるからだった。絶対積極の精神と聞けば、生の衝動に染まりきった教えであるような印象も受けたくなるが、相対積極ではなく、絶対積極という点が味噌なのだろう。相対積極は肉体のためにあり、絶対積極は魂のためにある。

 

言葉を積極的にして、心を怒らせることも、悲しませることも、怖がらせることもしちゃいけないよと天風先生は教えるが、これを曲解して、肉体のために言葉を発するなら、いわゆる”ポジティブシンキング”となる。言葉の目的地が、永遠と水平方向にしか伸びなければ、いつまでも宇宙真理に近づくことはない。泣いている友人や、落ち込む自分に「大丈夫だよ」と言葉をかけても、(まだ若いから)大丈夫、(お金はあるから)大丈夫といったような、相対的な「大丈夫」になる。相対積極は、価値基準を持ち、時代や状況や人によって変わるものだ。

 

言葉の目的地を、常に垂直方向に向かわせることが、天風先生の教えだと思う。人間の心は宇宙エネルギーと性質を同にするのだから、自分の発した言葉が宇宙霊の心である真・善・美に見合うものであるかを問うことに言葉の善し悪しを求める。その上で「大丈夫」と言葉を発したなら、それは無条件に大丈夫ということだ。自然を思い出すと想像しやすい。悲しみに暮れる夜、月を見上げて救われた人間は多いだろう。大木に抱きついて涙を流した人間もいるだろう。絶対的な言葉は、自然のように無条件に我々を抱擁するものだと思う。

 

絶対積極の言葉を発するとは、偉大な宇宙エネルギーを、肉体を通して言葉に置き換えることである。真・善・美という観ることも触ることもできない宇宙に漂うエネルギーを、地上に展開させる手段が我々人間にはある。宇宙エネルギーを地上展開した言葉は、個性を生み、それが束になると文化になる。文化と言えば大袈裟に聞こえるが、古き日本人が残した言葉に大和魂や葉隠の忍恋が詰まっていることは、読めばすぐに分かるだろう。

 

天風先生の本には、一つのエピソードで一冊の物語になりそうなくらい肝を抜かされるような話が次々と登場する。軍事探偵をしていた頃、満州鉄道を爆弾で破壊するために、敵兵の警備の目を避けながら穴を掘って爆弾を埋めて、タバコの火で着火を試みるも導線が湿って中々火が付かず、ちゃんと爆発することをギリギリまで見届けて任務を遂行した話。ストライキを起こして炭鉱に立てこもった炭鉱夫たちが、近づく人間を鉄砲で撃ち殺そうとする中、調停のために弾が飛んでくる中を身一つで歩き抜き、頭と話をつけてしまった話。初めて真剣で人と斬り合ったときの話。オオカミに追われて木の上で3日過ごした話。

中村天風という人間に、生のみならず死の重たさも感じるのは、魂の崇高のために肉体の死を厭わない葉隠の魂を感じるからだった。清さ、正しさ、強さ、尊さのために自分の命を死なせることができる純粋に、時代を超えても人々は陶酔する。純粋に生きることを、魂は望んでいる。

 

精神修養 #125 (2h/258h)

クンバハカ。肩を落として肛門を締め下丹田に気を集中させる。ケツを締めることを身体は徐々に覚えてきて、最初ほどの困難を感じることはなくなった。肩を落とすことが意外と盲点となりがちで、動作が簡単ゆえにできていると疎かにしていたが、実際意識を向けてみるとさらに5mm~1cmくらい下がることがある。

気づかないところで身体は緊張している。思えば、クンバハカが必要だと思うときは、心が消極的なことを考えるときである。意識的にしないように努めたいことを、無意識でやってしまうときだから、身体の隅々の緊張も盲点になりやすいのだろう。身体のすべての緊張に気づくことは難しく、ゆえに肩、肛門、下丹田の3点だけを気を付けるように教えたのが天風先生のクンバハカだろう。

 

[夕の瞑想]

本能心も理性心も、活発化した状態は興奮状態といえる。本能心も理性心も、落ち着けば、実在意識は驚くほど静かになる。すると眠くなる。これは、霊性心があらわれて、身体の反応が宇宙の法則に素直になったということじゃないかな。霊性心があらわれると、身体は調和に向かう。蓄積された疲労は、眠りによって清算されようとする。

身体が疲れていても、明日テストでやらなきゃ死ぬ!みたいな状況であれば、理性心や本能心は興奮し、眠たいという反応は生じない。これは霊性心が抑え込まれることによって、宇宙の調和が実行されないといえる。無理をして置き続ければ、不調和の歪みは大きくなり、耐え切れなくなった時に、眠りに落ちるか、場合によっては病となって清算される。

いずれにせよ瞑想をして雑念が消えると途端に眠くなるのは、ある意味自然なことかもしれないと思うようになったが、どうなのだろう。

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