戦い斃れるか。彷徨い斃れるか。[945/1000]

わが兄弟よ、あなたがひとつの徳を持ち、それがあなた自身の徳であるなら、それは他の何びととも共有すべき性質のものではない筈だ。

名前をつければ、それは民衆と共通のものとなり、あなたはあたなの徳を持ちながら、民衆となり畜群となってしまう!

むしろこう言うべきなのだ。「わたしの魂に苦しみやよろこびを与えるもの、わたしの内臓の飢えでもあるものは、言葉に言いあらわしがたく、名前を持たないものなのだ」と。

ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」

轟々と燃える太陽が、西の山に没してゆく。一日が終わる頃になると、生命は日々成し遂げたことを数え出す。一つ、二つ、三つ。数の分だけ、陽から褒美が与えられ、存在は大地の上に立つことが赦される。何も成すことのできなかった身体は、夕陽の美しさの裏側に、それ以上の虚しさを見る。大地から足が離れ、次には消えて幽霊となる。身体を持っていることが忌々しく、夜の闇で存在のすべてを塗りたくってしまいたくなる。

太陽に焼かれるか、闇に身投げするか、死を欲していることには変わりない。戦い斃れるか。彷徨い斃れるか。どちらにしろ夜の砂漠が相応しい。燦爛たる太陽に熱された砂漠、月の光に包まれ永遠の休息を取るか。さあ、歩こう。歩こう。魂が完全に消滅してしまう前に。

 

2025.1.21