森に珍客が訪れる。木霊が静まり返る闇に、一点の火が灯った。火を囲って踊ろうか。酒を飲んで語ろうか。たいそうな肉をご馳走になり、痩せ細った身体は久々の糧をえる。
おれたちは何に酔い痴れる。自然を克服したことを自らに言い聞かせ、酒池肉林を振りかざすことか。自然を畏れながら、その足元で地上の再会をほそぼそと祝うことか。
当然、前者は食事も寝床も豪華になる。高級で贅沢になるほど、陶酔は色濃く増していく。後者はどちらかというと、質素倹約である。主を立て、分を弁えた待遇に歓びを得る。
前者の豪快な快楽は男らしい。酒を片手に高級な肉塊にかぶりつくのは言葉に尽くしがたい至福だ。後者は一歩間違えれば貧相で惨めとなる。だが、己を貶めることのない分を弁えることは、人間の器量がなす粋な振る舞いだと感じる。
おれたちは何に酔い痴れる。
2024.10.11