葉隠は、高慢によって高慢を超えていけという。エゴイズムによってエゴイズムを超えていく。人間の生活を願い、生活を築かんする私は、生活によって生活を超えていくことを志す。家を建てたり、畑をやったり、猟をやったり、土地深くに根を張り伸ばしていくが、ゆくゆくは生活を捨て、生活を飛び越えていきたいと願う。
思い返せば、福岡で教員をやっていた時分、いまより真っ当な職についていたわけだが、生活が築き上げられていく予感がまったくしなかった。いくら上辺がちゃんとしていても、そこに実のある魂がなければ、築かれた生活は、遅かれ早かれ崩壊する。今日、世を見渡せば、家庭(夫婦)の不和、仕事の敗北など、生活の崩壊はあちこちで起こっている。高いところから地に堕ちるのは苦しい。人間関係は壊れ、金も地位も失われ、人は身一つとなって、野に放り出されるのだから。
これは地獄だが、好機でもある。欺瞞のなかを慢性的に生きるよりはましだろう。それに、堕ちるところまで堕ちれば、今度は自分で底を固められる。孤独に魂を追い求めた時間は、そっくりそのまま、次の生活の礎となっていく。現代ヒューマニズムの腐った土台を壊し、一から生活を立て、今度こそ生活を超えていくのである。次は負けまいと胸に誓って。
2024.9.16
コメントを残す