一度はこの俺にも、物語を想い、英雄を想い、幸運に満ち満ちて、黄金の紙に物書いた、―愛らしい少年の日がなかったろうか。何の罪、何の過ちがあって、俺は今日の日の衰弱を手に入れたのか。
ランボオ「地獄の季節」
思えば、俺の少年はいつから姿を消したのだろう。無垢は、純粋は、いつから女々しい世俗の犬をおぼえたのだろう。いつ自覚は、絶望は植え付けられるのだろう。ああ、青年とは身を蝕む絶望に抗う誇り高き戦士であった。戦いに敗北した壮年は夢を失う。俺たちは中途挫折した人間の事業を、もう一度始めるときを迎える。夢心地に死ぬためだ。少年のような長老へ、俺は肥えた身に石を食わせる。くすんだ目を雷雨で洗い、谷底から眩くような力強い光を与える。
2024.4.29
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