月光の夏[795/1000]
「月光の夏」という映画を観た。出撃前、今世と別れを告げるために、ベートーヴェン「月光」をピアノで弾き、戦死していった特攻隊青年の実話をもとにした話。私自身、月光には深い思い入れがあり、色んな人の演奏を聴く。第一楽章は重く…
「月光の夏」という映画を観た。出撃前、今世と別れを告げるために、ベートーヴェン「月光」をピアノで弾き、戦死していった特攻隊青年の実話をもとにした話。私自身、月光には深い思い入れがあり、色んな人の演奏を聴く。第一楽章は重く…
森で木こりをしている。今年の冬に寒さから身を守るための、ちいさな家をつくるためだ。昨年もひとつ小屋をこしらえたが、すきま風があちこちから入り込み、とても寒い思いをした。私の棲む森は、昼間でも陰っており、氷点下であることが…
食事が人間をつくるというのなら、日本人の魂を醸成するのは米ではなかろうか。外国から帰国した人間が口を揃えて「日本のお茶漬けがいちばん美味い」という様を、三島由紀夫は”お茶漬けナショナリズム”と皮肉…
あれほど難しいと思われた病までもが、笑っているうちに治癒してしまったという話をよく聞く。笑いが肉体に及ぼす影響の大きさに思いを巡らしていると、宇宙の創造主であるデミウルゴスの神意に触れられそうな気がしてくる。よく笑う人間…
炎天下の畑に焼かれていると頭が朦朧としてくる。数十メートルあろう畝を行ったり来たりしながら、苗を黙々と定植していると、気づけば倒れそうになっていた。俺たちはもっと太陽を信頼してもいい。そう言葉にしたものの、熱渦の淵に身を…
恋はみな背が低くなり、忍ぶことが少なければ少ないほど恋愛はイメージの広がりを失い、障害を乗り越える勇気を失い、社会の道徳を変革する革命的情熱を失い、その内容する象徴的意味を失い、また同時に獲得の喜びを失い、獲得できぬこと…
美しいものは強くいきいきと、エネルギーにあふれていなければならない。それがまず第一の前提であるから、道徳的であることは美しくなければならないことである。しかし、それは衣装を吟味したり、女風になることではなくて、美と倫理的…
お盆だ。先祖の墓参りに帰りもせず、森で一人、木こりをしている。爺ちゃん婆ちゃんの家が懐かしい。今は取り壊されて駐車場となってしまった。広い座敷があって、正月には親戚が二十人近く顔を合わせて座ることもできた。もうあの賑やか…
力あるところに宇宙は生まれ、力失うところに宇宙は消滅する。宇宙存在の本質が力であるなら、生命にとって善とは力であり、悪とは無力である。力の湧いてくる生き方は道徳的であるといえるし、無力に陥っていく生き方は非道徳的であると…
合理的に考えれば死は損であり、生は得であるから、だれも喜んで死へおもむくものはいない。 (略) 近代ヒューマニズムといえども、他人の死でなくて、自分の死を賭けるときには、英雄的な力を持つでもあろうが、そのいちばん堕落した…