涸渇感を愛す[502/1000]

涸渇感を愛す

奈落のどん底に突き落としてくれるものを愛す

己は人間のクズだと突き放してくれるものを愛す

天狗のように伸びた鼻をへし折ってくれるものを愛す

ケチくさい自尊心をずたずたに引き裂いてくれるものを愛す

 

涸渇感を愛す

己に足りないものは血だ

満たされた肉体の中で、魂は傷に渇いている

傷なきところに人類の背骨は立たないだろう

ああ、血よ、魂よ

己を奈落のさらなる向こうへ突き落せ

真の孤独のなかで死なせてくれ

 

【書物の海 #32】地獄の季節, ランボオ

かつては、もし俺の記憶が確かならば、俺の生活は宴であった、

誰の心も開き、酒という酒はことごとく流れ出た宴であった。

ある夜、俺は『美』を膝の上に坐らせた。―苦々しい奴だと思った―俺は思いっきり毒づいてやった。

俺は正義に対して武装した。

俺は逃げた。ああ、魔女よ、悲惨よ、憎しみよ、俺の宝が託されたのは貴様らだ。

俺はとうとう人間の望みという望みを、俺の精神の裡に、悶絶させてしまったのだ。

 

2023.11.4

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