2024年11月15日。狩猟解禁日だ。今日という日を待ちわびた全国の猟師たちが、一斉に山へと潜り込む。早ければ今晩にも、ジビエ料理が夕飯を賑わすことだろう。一年前の今日、猟師になることを夢に見た。一年後の今日は山に入るかもしれぬ。そんなことを言葉にしたが、叶うことはなかった。その代わり、着々と家づくりを行っている。
束石を水平に並び終え、その上に束柱を立てた。本来、水糸の位置を参照し、容易に設置できる予定だったが、貫板(建物のまわりを囲う板)を束石の高さよりも低くつくってしまったので、水糸が石に干渉してしまい、位置の割り出しと水平を出すのにかなり苦労した。結局、遣り方でつくった基準を一度すべて捨て、四隅の石を木材で架橋しながら、改めて水平と位置を割り出すことにした。四隅の石が設置できたところで、改めて新しい基準で水糸を張り、その他の石、及び束柱を完成させた。土台がこの上にできれば、とりあえず最初の峠は越える。
四隅の束柱が少し黒くなっているのは、試しに焼いてみたからである。桧はもともと水に強いが、雨ざらしとなる束柱には何か手を施したい。防腐塗料が第一に思い浮かんだが、無垢でうつくしい桧に人工塗料を塗るのは、なんだか勿体ない気がした。高級な和牛を市販の安いタレに浸して食っているような、素材の良さを台無しにしている感じがあった。
調べてみると、「焼き土台」というものを見つけた。桧の土台を火で炙ることで炭化させ、腐朽に強くする。手間がかかるので、こだわりのある建築家でないかぎり採用しない手であるが、これと同じように「焼き束柱」にしようと考えた。素材の良さを台無しにしないまま水にも腐朽にも強くなる。
均一に焼くのが難しく、少し目を離すと燃えてしまう。手間がかかるが、こうした古典的な方法は私の性に合っている。何より家と自然、人間と自然を、分断しないのがよい。
このまま順調にいけば、年末までには完成するはず。狩猟はそれから。
2024.11.15