仕事を辞めるか辞めないか③[340/1000]

長い葛藤は一刀両断された。昨日、社長に仕事をやめることを話した。大変世話になったため、罪人のように心苦しい告白であった。(実際、罪であると思う。)しかし、すべてを正直に告白してしまうと、結果的に心あるいい時間となった。6月末まであと一か月働く。それからは、森の家づくりに専念することになる。私のような堕落したクズ人間を雇ってくださった恩は決して忘れない。

 

仕事をやめることも、やめないことも、どちらも真実を含んだ。ゆえに、最後の最後まで葛藤したが、決め手となったのは、モーム「月と六ペンス」を読んでいるときに、突然、天から降ってきた言葉だった。

「その人間にとって最良の運命はいつも雄々しいものである」

この天からの言葉が、決定打となった。人間は、雄々しい方へ進まなくてはいけない。運命が拓かれることがあるとしたら、それはいつも雄々しいものである。それを思う時、金が途絶える恐怖も、社会から孤立する不安も払いのけ、仕事を捨て去り、前に進むことだけに集中しなくてはならなくなった。

 

働いて貯めた金はすっかり森に使ってしまった。金の不安はあるが、底を尽きたらまた稼ごう。しかし万が一、餓死することになっても、多分、後悔はしない。なぜなら、その時こそ、肉体を置いてきぼりにして魂の活動に専念するという、人間の悲願が果たされるからだ。そこで初めて魂は救済される。道半ばで犬死したとしても問題ない。肉体を退け、崇高な価値のために生きれたと、誇れる。

 

しかし、そんなことは逆に難しいのだ。正気であればあるほど、餓死よりも前に、肉体を守ることを優先するのが本能だ。悪魔に憑りつかれたように狂わなければ、決して肉体を置いてきぼりに、死ぬことなどできない。

だからむしろ、そのくらいに生きてみろと言いたいのだ。できるものなら、餓死してみろ。できるものなら、食わずに生きてみろ。それくらい魂に狂ってみろ。そうして狂った先に、満ち足りて宇宙の混沌へ還っていけと。

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