食いきれぬほど哀しみを食った。命はどれほど耐えゆくだろう。[929/1000]

世相が移ろい、時代に後れを取る。老いぼれ爺になろうとも、山間を無邪気に駆け抜ける、天狗のような風でいられたら。道徳が論じられ、説教がよく流行る。それでも一途な、詩のままであれたら。すくっても指の間から落ちてゆく、清らかな川の水のように、言葉や考えに捕まらぬ、時を旅する自由な生命であれたら。もう食いきれぬほど哀しみを食った。あと命は、どれほど耐えゆくだろう。流れる涙の跡を隠して、故郷と別れる夜風に歌う。

 

2025.1.5