長く息をしつづけるのは詩の息遣いがある言葉だけである[899/1000]

自分の生まれた周期には生命力が弱まるという。以前知り合ったある女性が、夏に生まれたのに夏が苦手だと言ったことは、理にかなっている。私は一月二十七日生まれで、一年で最も冷え込むとされる大寒の真っただ中である。たしかに私は寒さに弱い。だが、私が冬をもっとも愛すのは、肉体の力が失われていく裏側で、魂が息を吹き返すと感ずるところがあるからである。われわれはどこからきたのか、どこへいくのかを思い出し、人間にとって何がほんとうに大切かを問いたくなる。ゆえに冬は、一年のなかでも最も高貴な季節だと私は信じる。

芸術至上主義と言えば恥ずかしいことは承知だが、私は己の綴る言葉のうち、詩的なものの他に何も価値を感じない。この数々の手記にしたところで、長く息をしつづけるのは詩の息遣いがある言葉だけであり、それ以外は全部インチキだ。教条的な言葉は頭に分かりやすく訴えかけるが、そんなものが果たして何に役に立つか。人間を人間たらしめる熱い涙。そいつが流れる言葉を、紡ぎ出す生き様をせねばならんのだ。

 

2024.12.5