夜、布団で眠れば、森の霊たちが夢に現れた。[894/1000]

寒さと暑さと、飢えと渇えと、風と太陽の熱と、虻と蛇と、これらすべてのものにうち勝って、犀の角のようにただ独り歩め。

音声に驚かない獅子のように、網にとらえられない風のように、水に汚されない蓮のように、犀の角のようにただ独り歩め。

中村 元. ブッダのことば-スッタニパータ (岩波文庫)

音に驚くは獅子ではない。網にとらえられるのも風ではない。人間もまた現世にとらわれぬものである。日頃の迷妄と濁り、怖れと不安に捕らえられそうになる己は生きすぎた。一年前の今頃、森の生活を思い出せば、命はずいぶん俗物を食ったものだ。夜、布団で眠れば、森の霊たちが夢に現れた。恋も友情も愛情も、全部そこで見つけることができた。犀の角のようにただ独り、飢えにも寒さにも負けず歩んでいけば、霊妙な空気に導かれ、全部そこへ通じていった。そんな生活がとても恋しくてたまらない。

 

2024.11.30