父性と母性、そのどちらが欠けても人間は女々しくなる。[874/1000]

不甲斐ない。もらう金の分すら、仕事もできんのか。重機を詰まらせ、手鎌を折り、まったく不甲斐ない働きぶりだった。そんなことを考える己のケツを豪快に蹴り上げようとする力と、温かく慰めようとする力が、心の奥底に同時に迫ってくる。なるほど、前者を父なる力とし、後者を母なる力とするなら、父性と母性は背中合わせに、均衡を保っているようだ。己はその中心に居座りながら、黙って天地の結合を感じている。どちらに振り切れることもなく、ただ、堂々と中心に居座っていれば、力は正しい運動を取り戻していく。どちらにも傾倒しない。その結果として生じる状態が、人間の雄々しさである。どちらかが欠けては、人間は女々しくなるのである。仲睦まじい男女から感じる、一種の女々しさのように。母性に傾倒した世の無気力のように。

 

2024.11.10