愛するもののために命を張って生きられること以上の仕合せがいったいどこにあるというのだ。[749/1000]

もう秋か。―それにしても、何故に、永遠の太陽を惜しむのか、俺たちはきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、―季節の上に死滅する人々からは遠く離れて。

ランボオ「地獄の季節」

一見明るそうに見え、内実、暗い世の中である。うすうす感じていたことではあったが、インドを旅して実感は強まった。2023年、インドの人口は中国を追い抜き世界一となった。足のない痩せ細った爺さんが、道端で物乞いをしているような、陰惨な苦しみは大地に根を張るが、陽として街に溢れ返る人間の熱気には、腹の奥底からこみ上げてくるものがあった。貧しさの中から人間の美しい部分は雄々しく光を放った。インドの青年たちは、人口世界一を誇らしげに語った。彼らの態度には、国家のエゴイズムがあった。国を思い、憂い、そして誇り、一つの運命共同体として、魂に行き場を与えてやるような、そんな懐かしい感覚だった。民が国を思い、戦って死ぬことは狂気だろうか。彼らは必ず不幸な存在だっただろうか。封建主義は悪で、個人の平等と権利は絶対尊いものだろうか。馬鹿を言え。愛するもののために命を張って生きられること以上の仕合せがいったいどこにあるというのだ。苦しいとき、いつもランボオのこの言葉を思い出す。それにしても、何故に、永遠の太陽を惜しむのか。俺たちはきよらかな光の発見に心ざす身であろうに。

 

2024.7.7

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