生活の仕合せ[673/1000]
さて、俺一人の身を考えてみても、先ずこの世には未練はない。仕合せなこと事には、俺はもう苦しまないで済むのだ。ただ、俺の生活というものが、優しい愚行のつながりであった事を悲しむ。 ランボオ「地獄の季節」 肉体の完成など仙人…
さて、俺一人の身を考えてみても、先ずこの世には未練はない。仕合せなこと事には、俺はもう苦しまないで済むのだ。ただ、俺の生活というものが、優しい愚行のつながりであった事を悲しむ。 ランボオ「地獄の季節」 肉体の完成など仙人…
倦怠はもはや俺の愛するところではない。忿怒と自堕落と無分別、―俺はその衝動も災禍もみな心得ている、―そんな重荷はすっかり下された。俺の無邪気の拡がりを、心を据えて検べてみるとしよう。 ランボオ「地獄の季節」 形骸化だろう…
『神』がもし聖らかな天空の平穏を、祈りを、与えてくれたのなら、―古代の聖賢のように。―聖人、強者か、ふん、遁世者、いかさま芸術家か。 道化がいつまで続くのだ。俺は自分の無邪気に泣き出したくなる。生活とは風来の道化である。…
もう秋か。―それにしても、何故に、永遠の太陽を惜むのか、俺たちはきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか、―季節の上に死滅する人々からは遠く離れて。 ランボオ, 「地獄の季節」 毎日がどれほど平坦になろうとも、地球は永遠…
歴史上、神の言葉を口にした者で、胡散臭くなかったものはどれほどいた。俺は、毎日一つ、枷を与えた。今日は手に、明日は足、それから首に。気づけば全身の筋肉の細部まで深く食い込み鬱血だらけとなった。完全に身動きが取れなくなる前…
俺はすべての存在が、幸福の宿命を持っているのを見た。行為は生活ではない、一種の力を、言わば、ある衰耗をでっち上げる方法なのだ。道徳とは脳髄の衰弱だ。 俺は、それぞれの存在が、様々な別の生活を借りているような気がした。この…
こんなところで腐る自分は本意ではない。だが、どうしたらいいかも、どこへ向かえばいいのかも分からない。腐った日々は空虚に過ぎ去り、一生取り返しのつかない泥道を歩きつづけている。このまま腐って人生を終えるのか。泥沼に沈んだま…
暗く沈む沼の底に、燦々ときらめく宝石がある。寒々とした夜の森に、動物を癒す炎がある。私は惹かれる。明るみに引き出されたものでなく、閉ざされ、秘められた、暗いものに。そのためなら、どこへでも行く。暗さと寒さと、不幸と孤独へ…
この世でうまくいかぬとき、そりゃ不貞腐れたくもなる。仰げ。そこらで飼いならされる犬たちを。健気に尻尾を左右に振り、愛想よく尽くしていれば、褒美の餌にもありつける。俺はゴミを漁る野良犬どもが憐れでしかたがない。運命に殴られ…
荒れ果てた人喰い沼で、己は幾度と涙した。錨を持たぬ肉体は、為すすべなく飲み込まれ、窒息寸前まで屈辱の底を這いつくばった。脳味噌抜かれた無分別を、己はどれほど恨んだだろう。絶望に看取られ沈没する様には、この世の悪魔もさぞか…