おお、「死」よ、老船長よ、時は来た!錨をあげよう!
僕らは退屈だ、この土地で、おお「死」よ!船出をしよう!
空と海、よしたとえ、インクのように黒くとも、
そなたが篤と知っている僕らの心は光明で一杯だ!
おお、「死」よ!そなたの毒を注ぎかけ、僕らに元気をつけてくれ!
この情炎のはげしさに、かり立てられて、
僕らは願う者なのだ、死の海の深間めがけて飛び込んで、
「地獄」も「天国」もかまわずに「未知」の底から新しさ探し出そうと!
ボードレール,「悪の華」
おお「生」よ、海の怪物。時を沈ませる、どろどろに溶けた鉛のように。
軋んだ船は音を立て、闇夜を裂いて舵をとる。波風のない不気味さに、気を許してなるものか。
見よ!水面を埋める夜光虫を。夜空に浮かぶ月の舟を。
まっとうに光るものだけが、僕の身体に英気を養う。
おお「生」よ、旅人の背を引き留める、寂しがり屋な怪物よ。
僕は君の死にゆく部分を愛した。時を泥底から解放し、自然の秩序に委ねるとこを。
老衰と別離を自覚して、哀しみの涙で頬を濡らすとこを。
「悪意」も「倦怠」も海に放り投げ、残ったすべての部分を一つ残らず噛締めよう。
2024.3.26
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