美しく、届かぬ記憶となる前に、今日も陽を浴びて労働に勤しもう。[942/1000]

実家で捨てられるところだった窓をもらい受けた。ガラスをハンマーで叩き割り、寸法に合わせて窓をカットし、家の背面に取り付けた。割ったガラスの代わりには、アクリル板を張り付ける予定だ。

窓枠に対して窓の寸法をぴったしにすると、摩擦で開閉がうまくいかなくなる。木の膨張や反りが生じても、窓が開かなくなるので、1ミリ程度の余裕があるとよい。かといって、隙間が空きすぎれば、風も入ってこようし、その辺りは調整は難しかった。

小学生時代、母に買ってもらった彫刻刀セットを引っ張り出し、鍵穴を掘った。学校の版画の授業で使っていた道具が、まさか家造りに役立つとは思いもしなかった。ドリルで鍵の深さの穴を開け、木屑をすくいだすように、彫刻刀で掘り出した。この鍵穴につっかえが差し込まれ、窓が固定される素朴な仕組みである。

細かく見れば歪みはあるが、不器用な私にしては十分な出来となった。それにしても、窓がはいると心が躍るものである。いつも見ている景色も、小洒落た窓をとおしてみると、感じ方が変わるものである。

苦しんでばかりの、淡々と進めてきた家づくりであったが、装飾部に入ってようやく楽しむことができるかもしれない。あの果てしない土木工事から、時の潮流に乗っかって、気づけばここまで運ばれてきた。あと少し。美しく、届かぬ記憶となる前に、今日も陽を浴びて労働に勤しもう。

 

2025.1.18