番長
ネガティブな気持ちになることは、誰にでもありますよね。
将来に焦りを感じることもあれば、恐れを感じることもありますし、やってしまったことに後悔することもあれば、自分自身に怒りや悲しみを覚えることもあります。
「辛い感情なんて無くなってしまえばいいのに!」と何度思ったことか…(笑)
けど、ありがたいことに認知の歪みに気付いて正すことができれば、必要以上にネガティブな感情になることはなくなっていきます。
別記事でも触れていますが、感情を引き起こすのは思考だからです。
感情を引き起こす思考には、妥当なものもありますが、妥当ではないものも多くあります。
自分自身によって、歪められた思考に気付いて、思考を正すことができれば、生まれてくる感情(の強さ)も変わってきますよね。
この記事では、認知行動療法の考え方をもとに典型的な認知の歪みを12個紹介します。
もし今、不安感や怒りといったネガティブな感情を感じているのであれば、この記事をたどりながら、ご自身の変化を感じてみてください。
Contents
1 全か無か思考
全か無か思考は、物事を0か100かの2面性だけで捉える思考パターンです。黒か白か思考、二分割思考ともいわれます。
完璧主義の人がよく陥りがちなのですが、100点満点じゃないと行動に移せなかったり、1つでも自分が認められないことがあると全てを否定するなんていうのもこの思考の例ですね。
全か無か思考の例
- 「テストで80点だった…。100点以外は0点と同じだ…。」
- 「頑張って練習したけど、本番で失敗した。全ての努力が無駄になってしまった…。」
- 「まだ完璧にできる自信がない。完璧じゃなかったら意味がないよ。」
2 運命の先読み
「運命の先読み」というと占い師を想起しますが、ここでの意味は現実的な可能性を考慮せずに、未来を否定的に先読みすることです。
今の自分の大変な状況が、一時的なものであるにも関わらず、これが一生続くと考えてしまう思考のパターンですね。
運命の先読みの例
- 「好きな人に振られてしまった…。自分は一生孤独だー。」
- 「またきっと、あの人に嫌なことを言われるんだろうな。」
- 「失敗してしまった…。今後の人生も成功することは二度とないんだろうな。」
3 肯定的側面の否定や割引
肯定的側面の否定や割引は、自分の経験や過去に残した実績、長所などのポジティブな側面を理に合わないにも関わらず、無視したり否定することです。
客観的にみれば、「すごい!」って思えることでも、自分のことになると妥当じゃない評価をしてしまうということですね。
肯定的側面の否定や割引の例
- 「テストで100点を取れた!!!…..けど、自分の実力じゃなくてテストが簡単だっただけだ。」
- 「笑顔が素敵とよく言われるけど、こんなのただの作り笑いだ。」
- 「ありがとうって言ってくれたけど、私に感謝してるんじゃなくて、ただの社交辞令だろう。」
4 感情的理由づけ
感情的理由づけは、『自分がこう感じているから、これが事実に違いない!』と思い込んで、それに相反する根拠を無視したり、軽視することです。
世の中には青色しか存在しないと信じて、赤色や黄色を無視して青色の物だけを見るようなものですね。
この例だと、明らかに無理があるように思えますが、実際に思考が歪んでしまった時にはこれと同じことが起きています。
これがポジティブな方向に働けば、『根拠のない自信』になりますね。
感情的理由づけの例
- 「自分の容姿はキレイではない」と思い込んでいるから髪型も服装もオシャレなのに、自分のルックスに自信を持てない。
- 「自分は人に好かれない」と思い込んでいるから、人から優しくされていても、厳しく扱われたことばかり思い出す。
- 「自分はしっかりしていない」と思い込んでいるから、自分が頑張っていることを棚に上げてしまう。
5 レッテル貼り
レッテル貼りは、合理的な根拠がないまま、自分や他人に一方的、断定的に評価をつけて否定的な結論を出すことです。
相反する根拠を無視する「4 感情的理由づけ」に対して、根拠がなくても否定的な決めつけをしてしまうことですね。
レッテル貼りの例
- 「アイツは性格が悪いやつに違いない。」
- 「自分はダメ人間だ。」
- 「自分はどうしようもないやつだ。」
6 拡大視/縮小視
拡大視、縮小視は、自分や他人、状況を評価する時に、『否定的な側面→重視/肯定的な側面→軽視』ということです。
また、この思考の歪みの特徴として、他人に対しては反対のことを行います。
少しの成果を過大視して、大きな失敗を軽視するということですね。
結果的に焦燥感を感じることに繋がってしまいます。
拡大視/縮小視の例
- (初デートを楽しんだあと)「上手くしゃべれなかったから、嫌われたかも。」
- (仕事が上手くいったあと)「今日は調子がよかったけど、こんなの当然だし大したことじゃないよ。」
- (普通に仕事をこなしているだけの同期を見て)「〇〇は仕事で上手くいっているみたい。私だけ置いていかれる…!」
7 心のフィルター
心のフィルターは、全体を見るかわりに、一部の否定的な部分を見て、全体を暗く捉えてしまうことです。
極端ですが、真っ白の紙の小さな黒い点を見て、この紙は黒だ!と認識してしまうようなものですね。
心のフィルターの例
- 「自分はスタイルが良くないから、絶対にモテない。」←性格を度外視
- 「怒られてしまった。自分は仕事ができない人間だ。」←他の部分では評価されている
- SNSで賞賛コメントの方がたくさんあるのに、1つのアンチコメントで頭を悩ましてしまう
8 読心術
読心術は、一般的に表情などから、相手の心の中を読み取る術として知られていますが、ここでの読心術は、現実的な可能性を考えずに、相手の心を否定的に読んでしまうことを意味します。
「あの人は私のことこう思ってるだろうな~」というのも読心術です。
言い換えると、心の読みすぎですね。
読心術の例
- 「あの人は私のことが嫌いなんだろうなあ。」→現実的には自分のことで精一杯で不愛想なだけかもしれない
- 「上司は私ができないやつと思っているんだろうなあ。」→現実的にはすごく期待している
- 「この人は私のことを自信のない人だと思っている。」→第一印象は実は好印象だった
9 過度の一般化
過度の一般化は、1つの嫌な出来事に対して、世の中全てがそうであると否定的に結論を出すことです。
「1 全か無か思考」が0か100で物事を判断するのに対して、過度の一般化は、1を100にするということですね。
過度の一般化の例
- 1人に嫌われただけで、「自分は人から好かれない人間だ」と思い込む。
- 1つ仕事ができなかっただけで、「自分は無能な人間だ」と思い込む。
- 1つのコミュニティが自分に合わなかっただけで、「自分に居場所なんて無い」と思い込む。
10 自己関連付け
自己関連付けは、嫌な出来事があった時に自分の責任だと考えることです。
自分に全く関係のないことでも、自分をそこに結びつけて、自分に負い目を感じてしまうことですね。
自己関連付けの例
- 「友達(上司)の機嫌が悪いのは、きっと自分が挨拶をしなかったからだ。」
- 「職場の仕事がうまくまわっていないのは、自分がしっかり働けていないからだ。」
- 「彼女がそっけない。他の女性と遊んだことがバレたのかも。」
11 「べき」思考
「べき」思考は言葉の通り、「〇〇しなければならない」「〇〇であるべきだ」と自分に制限をかける思考パターンです。
自分や他人の考え方や言動に、厳しい理想を求めて、その理想通りにならないことが「最悪」だと考えます。
「べき」思考の例
- 「自分は誰からも嫌われてはならない。」
- 「自分は全てを完璧にこなすべきだ。」
- 「パートナーは、美形で性格が良くて頭が良い人であるべきだ。」
12 マイナス化思考
マイナス化思考は、状況の否定的な側面しか見ない思考パターンです。
トンネルの中にいる時に、先に見える出口しか見えていないことからトンネル視ともいいます。
単純に、視野が狭くなっているということですね。
マイナス化思考の例
- 家族やパートナーの嫌な部分ばかり目に入る
- 自分の短所ばかりに目がいく
- 良い事があった時に、「運を使い果たしてしまった」と考える
最後に~感情がネガティブな時は12の歪みを見直してみましょう
これらのパターンは単体として起こることもあれば、いくつも重なり合って起こることもあります。
そして、これらの思考の歪みが、自分にあったとしても、悲観的になる必要はありません。
自分の思考に歪みがあるということを認知するだけでも、認知の歪みは緩くなっていきますよ。
番長
参考文献: 認知療法実践ガイド, ジュディス・S・ベック, 2004
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