日常性と非日常性が交わる一点において、肉体は赦され魂は救われる。[907/1000]
一日の終わりのささやかな楽しみのために、魂は犠牲になったということはできないか。日々の疲れや苦しみは、本来、信仰によって癒されるものである。日常と非日常が交差する一点で、傷ついた肉体は浄化される。娯楽や享楽が溢れる今日、…
一日の終わりのささやかな楽しみのために、魂は犠牲になったということはできないか。日々の疲れや苦しみは、本来、信仰によって癒されるものである。日常と非日常が交差する一点で、傷ついた肉体は浄化される。娯楽や享楽が溢れる今日、…
森を歩くと、凍った土がバリバリと音を立てて砕けていく。氷点下の日がつづき、生活に不都合が生じてきた。汲んできた湧水が凍って、飲むことができない。ガスコンロが気化して料理ができない。バッテリーも放電し、電気が底を尽きた。科…
屋根を張り終えた。下から張っていった最後の一枚、てっぺんの合掌部分が難しかった。屋根の上は眺めがよく、無心で玄翁を叩く時間はとても仕合せだった。毎日が家づくりで、森の生活は平穏である。最近、近所のお爺ちゃんがよく遊びにく…
四メートルのはしごを、登ったり下りたり、下りたり登ったりしながら、「きれいは汚い、汚いはきれい」という魔女たちの言葉を復唱していた。マクベスの冒頭に登場するこの言葉は、ちょうど一年前、昨冬の隠遁生活ではじめて知った。思え…
玄翁(げんのう)で釘を叩く音が、森に気持ちよく響き渡る。四メートルある杉板を、立ち上げた柱にどんどん打ちつけていく。近年は、釘の代わりにビスで済ませてしまうことが増えたと聞くが、やはり古典的な大工の姿といえば、金槌をつか…
不安は一種の波動にちがいないが、エネルギーを力と捉えるならば、不安はエネルギーというには相応しくない。力の欠如によって生み出される感情が不安であるが、真にエネルギーなるものは、むしろ不安を乗り越えていくものである。中村天…
無事、棟上げを終えることができた。自分一人でやったと誇りたいところだが、実際は父と母に手伝ってもらった。いまだに親の手を借りなければ、小屋の一つも建てることができぬ。早く一人前に生活を築き、親を安心させてやらねばならぬと…
ああ、己の傲慢さがつくづく鼻につく。青春の誓いは、どれほど遠くへ離れていってしまったことだろう。返し切れぬ親への恩、固い友との約束。人間にとって、もっとも大切なそれらを、常に心に留めていられたら。自分が生きすぎるほど他者…
ついに明日、上棟の日を迎える。上棟と偉そうなことを言っても、複雑な骨組みをしていくわけではなく、四つの三角軸組を立ち上げて、家の骨格をつくりあげるのである。もっとも、上棟は上棟。建物が立ち上がる瞬間は、どんな家においても…
自分の生まれた周期には生命力が弱まるという。以前知り合ったある女性が、夏に生まれたのに夏が苦手だと言ったことは、理にかなっている。私は一月二十七日生まれで、一年で最も冷え込むとされる大寒の真っただ中である。たしかに私は寒…