生命と宇宙の間で行われている恩の貸し借り[290/1000]
「働かざる者食うべからず」という言葉を、子供の頃父から教わった。 今では、この言葉が意味するのは、生命と宇宙の間で行われる、恩の貸し借りなのだと分かる。文明のために働くから、見返りとして食わせてもらえるのであって、働かな…
「働かざる者食うべからず」という言葉を、子供の頃父から教わった。 今では、この言葉が意味するのは、生命と宇宙の間で行われる、恩の貸し借りなのだと分かる。文明のために働くから、見返りとして食わせてもらえるのであって、働かな…
甥をもった夢を見た。赤子はとても可愛く、周囲は私に似ていると言う。私は無垢で純粋な甥を見て、この上ない幸せな気持ちになりながら、「お前はちゃんと幸せになれよ」と伝える夢だった。こんな夢を見たのも、昨日、寅さんをみた影響に…
木下惠介監督「二十四の瞳」を観た。瀬戸内海の淡路島に次いで2番目に大きい小豆島での、先生と12人の教え子の人生を描いた名作。 古き日本に流れる、胸をいっぱいにするこの温かい何かはいったい何なのだろうといつも憧れる。何に涙…
川沿いの桜並木道を、永遠の風が吹き抜ける。 永遠を感じることは、死を想うことと同じであろう。 美しく咲く桜を見て、同時に儚く散る桜を想い描く。 美しさが包む死と、死を包む美しさに胸は打ちひしがれるのだ。 日本人として生ま…
温かい季節になった。道を歩けば、野には黄色い花々が広がって、風によって甘い香りが運ばれてくる。少しずつ開いていく桜の花びらを毎日眺めながら、満開になる日を今か今かと待ち侘びている。道端の花を一輪摘んで部屋に生けると、なん…
私はこの世界の虚無を憎んでいるのかもしれない。 20代の半分をこの虚無を問うことに費やした、と書いたけれども、過去形ではなく、進行形である。 今もまだ、虚無を問うてるし、死ぬまで問い続ける宿敵にあるのかもしれないと思う。…
誰にも理解されないと感じるから、神に救いを求める。 神に救いを求めて、言葉は紡ぎ出される。 だから、詩も音楽も芸術も、涙がある。 涙があるものに、たくさん触れていたい。 深い孤独を抱えたまま生きていくほど、…
インドの古典であるギーターに、「私は人間における雄々しさである」という聖バカヴァットの言葉がある。 私はこの言葉に感銘を受けた。魂とは雄々しいものであり、自己の内から雄々しさを開花させることこそ、人間の宿命だと感じたから…
文明に飼いならされるとき、生命の実感を失う。野性を失い、無菌で血のない清潔な生活に覆われる。 文明から弾き出されるとき、生命は虚無となる。義を失い、道を失い、何のために生きているのか分からなくなる。 飼いな…
虚無に堕ちることが怖ろしい。あの苦痛にだけは耐えられない。 永遠から切り離されれば虚無となる。文明から孤立すれば虚無となる。楽を欲して、楽に堕ちれば虚無となる。同じように解放を望んでも、自由の虚無には耐えられない。 &n…