森の生活から文明生活に適応した結果[573/1000]
森の生活から文明生活に戻り、どうやら頭に円形ハゲができたらしい。我ながら情けない肉体だ。 ショックはない。ハゲるのなら、いっそのことスキンヘッドにしてしまえばいいと考えている人間だ。みっともなくハゲを隠すくらいなら、スキ…
森の生活から文明生活に戻り、どうやら頭に円形ハゲができたらしい。我ながら情けない肉体だ。 ショックはない。ハゲるのなら、いっそのことスキンヘッドにしてしまえばいいと考えている人間だ。みっともなくハゲを隠すくらいなら、スキ…
「神の愛」とか「愛の神」を口で語るのはやさしいのだ。苛酷な現実に生きる人間は神の愛よりもはるかに神のつめたい沈黙しか感じぬ。苛酷な現実から愛の神を信じるよりは怒りの神、罰する神を考えるほうがたやすい。だから旧約のなかで時…
怒りの神が支配する、暗澹の世界のなかにいて、はじめて人間を赦したキリストが、生誕したのは2024年前。 無責任な現実の脱落者として、生活を捨てたイエスは、ユダの荒野を孤独に歩いた。砂漠や死海は、現実の苦悩を象徴した。だが…
だが、彼は起きようとする気配もなく、ぼんやりと天井を眺めていた。横顔は、今まで眠っていたとは信じられないほど疲労を濃く滲ませ、目は背筋が冷たくなるほど虚ろだった。 (中略) 彼は旅に出て四年半になると言っていた。カナダに…
自由の輝きは、暗澹たる束縛のなかに眩く光る。 「ショーシャンクの空に」という映画が好きで、何度も見返している。ここに、描かれる壮大なテーマである「自由」は、厳格な規律に縛られる刑務所を背景に燦然と輝くものだ。  …
2023年1月上旬にスマホを手放した。以後10カ月、パソコンだけの生活をつづけてきたが、2023年10月に太陽光からまかなっていた充電バッテリーが故障したことを機に、完全にネットのない生活をはじめることにした。それに伴い…
涙が滞れば、無気力に屈しそうになる。 「素朴な水で胸奥を洗うことだ。」と大いなる智慧は言う。素朴な慣習を愛しているか。月を見上げること、言葉を綴ること、夜道を歩くこと、白湯をゆっくり胃に流し込むこと、ひとつずつあげていけ…
やりたいことを探して、幸せになれた試しが一度でもあっただろうか。 金になるかならないか、成功するかしないかを考えはじめれば、未来の灯火はひとつずつ消えてゆく。未来の可能性を探しているようで、自らの未来を狭めてしまっている…
電気のいっさいない三ヵ月の隠遁生活で、感情は森厳に整列した。脳髄は素朴な鎧を身に纏い強くなった。 文明生活のぬるま湯に馴染んだいまは、かれらも随分と放埓になった。ストーヴのおかげで手足が霜焼けになる心配はひとつもない。正…
島崎藤村の「破戒」の映画を観た。破戒は、隠遁中に感銘に受けた本の一つである。 差別を扱った題材に触れた後、「差別は駄目だ」と教条的に感化されることほど、偽善的なことはない。われわれは差別をしない”…