まっとうな生活に根を張れない旅人[637/1000]
インドから帰ってきた私とすれ違いざまに、母がタイに旅に出た。旅とはいっても、1泊1000円を惜しむような貧乏な私とは違った裕福な旅行である。また、生活に根を張らないただの放浪者とは違った、まっとうな生活の上に伸びていく旅…
インドから帰ってきた私とすれ違いざまに、母がタイに旅に出た。旅とはいっても、1泊1000円を惜しむような貧乏な私とは違った裕福な旅行である。また、生活に根を張らないただの放浪者とは違った、まっとうな生活の上に伸びていく旅…
爽やかな早朝に、10R(17円)の硬貨を1枚渡し、熱々のチャイを飲むのが、インド旅の楽しみの一つであった。昼は150R(255円)もあれば、十分なマサラとチャパティ(カレーとナンのようなもの)にありつくことができたが、少…
つい昨日、インドの旅から帰ってきた。インド初日で2000ルピーをトゥクトゥクにぼったくられ、人に聞いても欲しい情報が得られず、たらいまわしにされたものの、素朴で野蛮なインド人の感覚に触れて、生命的にほんとうだと思った。彼…
インド旅を終えて日本に帰ってきた。ずいぶん長いこと向こうにいた感覚であるが、友に帰還を伝えると「もう帰ってきたんだね」と返事がきた。私にとっては1ヵ月の重みがずっしりとある今回の旅も、現実時間のカレンダーでは2週間にも及…
海や雪を前にして、はしゃがない子供が子供らしくなように、洗練されすぎた人間は、人間らしくないのである。私がインドに抱いた感触は、人間がたくさんいるというものだった。インドに行けば価値観がぶっ飛ぶとよく言うが、私の場合は「…
インド人の女性は保守的であるというのが、旅を通しての印象だった。男に話しかけられることはあっても、女に話しかけられることはまずなかったし、伝統的なサリーに身を纏う生娘は、むやみやたらに男に話しかけることを慎しんでいるよう…
路地裏で遊ぶ子供の声、夕焼けを旋回する小鳥の群れ、一日の足労を癒すさわやかな風に、久々の自由を感じた。思い返せば、今回の旅は重く、敬虔な顔つきで旅をすることが多かった。信仰の厚いインド、もしくは貧困と物乞いに遭遇するイン…
まだ夜が明けぬ朝の4時、昨晩宿のおやじに頼んでおいたとおり、宿の前にはトゥクトゥクが待機していた。これからデリー行きの列車に乗ろうとするとこで遅れは絶対に許されなかったが、何のトラブルもなく駅に向かえそうでひとまず安心し…
初めて見たガンジス河は、あまりにも美しかった。待望の日の出には間に合わず、陽は既に少し高くなってはいたが、波は金色に揺れていて、泥褐色の混沌は、より一層、人間の罪を洗い流す聖性を宿しているように見えた。雑踏にもまれて、朝…
美しいものを美しいと感じるには、それだけの心の素養と下地がいる。山頂からの景色が美しいのは、一点に向けて高められた登山者の忍耐と期待が世界のこまごまとした美を受け入れる感性を爆発、解放させるからである。 逆…