何もないときにすべてがある。すべてを失ってすべてを得る。[418/1000]
すべてを失うことで、すべてを得る。いちばんよろしくないのは、少しだけもっている状態である。少しを失うことが怖ろしくて、前にも後ろにもすすめなくなる。日々、持ち金が底を尽きようとする私は、こう考えることで精神衛生を保とうと…
すべてを失うことで、すべてを得る。いちばんよろしくないのは、少しだけもっている状態である。少しを失うことが怖ろしくて、前にも後ろにもすすめなくなる。日々、持ち金が底を尽きようとする私は、こう考えることで精神衛生を保とうと…
未来に対する幻影、くりかえしや再生に対する幻影を完全に打ち砕かれて、人間が自分の存在の、芸術作品のような一回性に自足すること。そのとき人間どもは、憧憬や渇望を離れ、美しい終曲となり、つまり、今よりはよほど我慢できる存在に…
夜中にふと目が覚めて、眠れなくなる夜もある。鴨長明は、夜中にふと目が覚めたときは、囲炉裏のなかをかきまわして、まだほのかに温かい炭火を楽しんでいたらしい。なんとも贅沢な夜である。 私はというものの、森のなかで暮らしている…
型にはまらないという型にはまることは、度々起こりうる。型にはまりつづける強さを持たない。しかし、型にはまらなければ生きていけない。そんな弱さと弱さの狭間に、型にはまらないという型にはまる、という現象がおきる。言うまでもな…
現世はたしかに地獄かもしれないが、地獄だと思って地獄を生きるより、天国だと思って地獄を生きてみないか。 ハンモックに揺れる私に、吹き抜ける風が爽やかにささやく。あれほど神経を逆なでした蚊は一匹もおらず、葉音はさざ波のよう…
どんな人にも、大なり小なり波というものはあるであろうが、悪循環から抜け出せなくなるときほど苦しいものはない。気を弱くすると邪気が体内に入り込み、体を蝕み始める。大蛇の猛毒がゆっくりと全身をめぐるように、なんとなく気を緩め…
「魂とは肉体を拒絶するなにかである」とアランは言う。私はこの定義によって、魂の崇高さと厳かな美しさに、ほんのわずかであるが近づくことができたと実感する。 日々、私の肉体は拒絶され、その耐えがたい苦しさに魂から逃避しようと…
男を真に男にするのは、女であろうか。 ある人は、いい男によっていい女となり、いい女によっていい男になるといった。よく、恋をする女性は綺麗になるといわれるのは、その典型であろうか。男にしても、情けなく恥をかくような振る舞い…
感情はエネルギーである。感情が体内で凝固すれば、エネルギーの循環に不具合が生じ、心身に不調をもたらす。ゆえに、カウンセリングなどでは過去の苦しみを再体験しながら、体内に凝固した感情を涙に浄化させ、凝固したエネルギーを外に…
森の家に来客をむかえた。家はまだ屋根がついた段階で迎え入るには忍びない状態であったが、適当な場所に即席でテーブルをつくって、ハンモックとイスを置いたら、それなりに落ち着ける空間ができた。「ハンドパンをもっていく」というの…