ようやく退屈な日を終える。親指の爪ひとつ剥がれただけだというのに、先生の言いつけを守って二週間も休んでしまった。たかが足の爪一つ、まだ完治はせぬが、あとは毎日風呂に入ってれば、そのうち治るだろう。言われたとおり、何度も病院に通ったが、まるで生命力を吸い取られるようだった。我が肉体は粗野なつくりである。金もなく、家もなく、現代人としては、泥まみれで野蛮な環境を生き抜いてきた。最低限の外科治療がすめば、あとは野に放っておけば自然に治るだろうに。心配され、文明的に過保護に扱われるほど、生命全体としてみれば衰弱していくようだった。
私はやはり病院を好かぬし、薬も好かぬ。なんというか、女々しいものを感じるのである。己を強くし、生命的克服を志向することなく、安逸な処方に、はなから頼ろうとする貧弱さがあるかぎり、その身体は冷え切っている(冷え切っていく)ように感じるのである。知性と力によって生命そのものが温まる道は、その前に拓けていると思うのである。
2024.9.13
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