命の燃えゆくところをたどる神との戦い[958/1000]

言うなかれ 君よ 別れを

世の常を また生き死にを

海ばらのはるけき果てに

今や はた何をか言はん

 

熱き血を捧ぐる者の

大いなる胸を叩けよ

満月を盃にくだきて

暫し ただ酔ひて勢へよ

 

わが征くはバタビヤの街

君はよくバンドンを突け

この夕べ 相離るとも

かがやかし南十字を

いつの夜か また共に見ん

 

言うなかれ 君よ 別れを

見よ 空と水うつところ

黙々と雲は行き

雲はゆけるを

大木惇夫, 「戦友別盃の歌」

罪を感じねば人間を失う。恥を忘れても人間を失う。だが何より、戦いをやめることが、最も人間を失う。私にとって罪とは、戦いを放棄することである。私にとって恥とは、尻尾を巻いて逃げることである。戦いつづけるかぎり、胸を張れる。怒りも苦しみも敗北も傷痕も、すべては年月のなかで誇りへと昇華されてゆく。私にとって戦いとは力の道を踏襲することである。命の燃えゆくところをたどる神との戦いである。真に人間を愛する孤独の涙である。

 

2025.2.3