なにゆえ、黄金は光を失い
純金はさげすまれているのか。
どの街角にも
聖所の意志が打ち捨てられているのか。
剣に貫かれて死んだ者は
飢えに貫かれた者より幸いだ。
刺し貫かれて血を流す方が
畑の実りを失うよりも幸いだ。
哀歌4.1, 4.9
この冬いちばんの雪が降った。心なしか森が街から遠ざかってしまったように感じるのは、雪が生活の音を吸い込んでいるからだろう。耳を煩わせ、苛立たせる音の数々は、足跡一つない雪のなかに吸収されていく。音だけではない。大地を破壊しつくられた、目を悲しませ、憤怒させる光景の数々も、全てを白銀のなかに覆い隠していく。ああ、もとより生活と呼べる生活を持たぬのが仇となった。寒さに憑りつかれるものほど、幻想に救われようとする。凍える身のために、マッチを売った少女もあった。森の生き物たちは、身を隠し静まり返っている。彼らと同じように、春と太陽を望み、じっと耐え忍ぶだけの私に、もはや人間と呼ばれる資格はあるか。
2025.2.2