大切なことだから、何度も書こう。私は授かった恩を返すことのほかに、生きんとする意志を燃やすすべを知らない。自分をたいせつにするだとか、自分のために生きるだとか、優しそうな言葉を鵜呑みにしたとき、色んな関係が不義理に沈み、同時に自分もくだらない人間になっていった。人は一人では生きていけないというが、これは単なる助け合いを言うにかぎらず、人間関係から醸成される、恩や情、義や誠というものが、他人との関係のうちにしか生まれない精神的な意味合いもある。他者に身を捧げ、エネルギーの対価として授かる情ほど、人間の心を温めるものはない。
世話になった人間に不義理を働いた。友にも合わせる顔がなく、連絡を取ることもできなかった。これまで助けてもらったすべての人間に、恩返しをするまでは死にきれない。森に家をつくることも、猟師になろうとすることも、すべての動機はここにある。友を森の家に招待し、どでかい猪肉をたらふく振る舞うことが、今抱いているささやかな夢である。根のある生活を築き上げ、まっとうな人間になることが、親や恩師に報いることである。
思えば、だれかのために生きようとすれば、うまくいかなかった。これまで人に良くしてもらったことを、よくよく思い出し、その恩をぎゅっと噛み締めれば、人様に顔向けするために、もっと早くこうするべきだと知ることができたろうに。孤独に生きながら、人間関係のうちに生きることができただろうに。
2024.9.26
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