「月光の夏」という映画を観た。出撃前、今世と別れを告げるために、ベートーヴェン「月光」をピアノで弾き、戦死していった特攻隊青年の実話をもとにした話。私自身、月光には深い思い入れがあり、色んな人の演奏を聴く。第一楽章は重く、暗く、深い海へと沈んでいくような曲調。それゆえ、闇を彷徨う、演奏者の魂の清らかさがいっそう際立つ。特攻隊の青年たちの写真をみると、皆、ほんとうにいい表情をしている。やさしく、力強い笑顔と、魂をむき出しに生きる風体から放たれる真実である。月光には、そうした人間の生き様がよくあらわれる。映画で演奏される月光もまた、素晴らしいものだった。
今日おれたちは、彼らのような、いい表情ができているだろうか。死にゆく彼らはかえって輝き、生に燻る現代人は光を失っていないか。私は彼らの一生を思うほど、己の人生を清く潔く生き切ることにますます責任を感じる。いい表情をして生きること。きよらかな魂に放つこと。そうやって今日を生きていくのだ。
2024.8.23
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