孤独な者よ!あなたは愛する者の道を行く。あなたはあなた自身を愛し、それゆえにあなた自身を軽蔑しなければならぬ。それは愛する者だけの知っている軽蔑だ。
…
わたしの涙をたずさえて、あなたの孤独のなかに行きなさい。わが兄弟よ。わたしが愛するのは、自分自身を越えて創造しようとし、そのために破滅する者だ。
ニーチェ「ツァラトゥストラはこう言った」
だれにも会うことのなかった森の暮らしには数えきれない涙がおちた。たいせつに仕舞われた旧冬の記憶は当時の息遣いを残したまま、心の醜悪になった部分に霊気を吹き込もうとする。街に降りてから、心はすっかり汚れてしまった。じぶんを軽蔑することは愛のはじまりではあるけれど、すべては力の不足が引き起こすものだ。ただしい力を身に着けるほど、心は邪念をはねのけて、純粋で清らかなものにちかづいていく。悪い心持ちが罪だというのは、じぶんの力の問題だからだ。ぼくには善悪が語れるような立派な人格を持ちあわせていないけれど、もし人間にただしい道があるとすれば、力の道を歩むことだと信じている。無力の先には惨めな迎合しかない。力を信じる人間が、清冽で強い人間になっていく。そういう人間を、孤独を生きる戦士という。
2024.6.17
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