旅人の困憊[723/1000]

旅して人の身につける知識は苦い!

単調で小さな世界は、今日も昨日も明日もまた、

僕ら自身の絵姿を見せるに過ぎず

要するに倦怠の沙漠の中の恐怖のオアシス以外でない!

ボードレール「悪の華」

運命に棄てられた旅路は、砂漠に斃れる魂を知らぬ。月灯りにとまらない草枕の嗚咽を倦怠は知る由もない。神が死んだとき旅も本当の姿を喪った。満たされない渇きの果て、肉体の僕となりつづける旅人の困憊に、先人は涙を流しているだろう。汚い地べたを這う野良犬に抱く、密かな憧れの存在を俺は疑わない。偽りの優しさに虚勢されまいと、己を孤独の谷に突き落とす。

2024.6.11

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