日本人が喪ったもの、それは太陽への全幅の信頼だ。[716/1000]

では、俺を信ずる事だ、心を和げ、導き、癒すものは信仰だ。皆んな来るがいい、―子供たちも来るがいい、―俺は君たちを慰めよう、君たちのために、人は、その驚くべき心を放つであろう。―哀れな人々、労働者たち。俺は祈りなど望みはしない。君たちの信頼さえあれば、俺は幸福になれるのだ。

ランボオ「地獄の季節」

気分が好い。つまり病態は深刻だ。亡者の行進を遠目に、鎮まる魂は哀しげな詩を歌う。自然の主、太陽が臓器の深くを熱し、はじめて生活は瘴気を振り払う。日本人が喪ったもの、それは太陽への全幅の信頼だ。額に汗する百姓の姿を神々しく辿る。文明はいつから太陽を拒絶する。陽傘も結構。屋内も結構。西洋じみた青白の芸人も結構。血も肉も骨の髄も、そして精神まで、萎なびれた蒲公英のように陽に飢えている。またまた、百姓じみたことを口にしているだろうか。俺はそういう育ちだ。大地に根づいた生活に羨望を抱く黄昏の亡者だ。

 

2024.6.4

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