前世紀には俺は誰だったか。今在る俺が見えるだけだ。もはや放浪もなくなった。あてどのない戦もなくなった。劣等人種はすべてを覆った。―いわゆる民衆を、理性を、国家を、科学を。
ランボオ「地獄の季節」
風はいつも涙を誘い、罪の鎧は涙に砕ける。小石を蹴り、草を踏み分け、そよ風を背に森を歩けば、少しずつ人間の感覚は蘇る。素朴な歩みは小さくてよい。俺たちの故郷につづく道は、歩みの速さを問題にしない。精神病者はカーテンを開ければそれでいいように、運動は小石を蹴ることからはじまる。肉体の老いをおそれるものか。大自然から授かった、生きんとする意志さえあれば、どうにでもなる。俺は力を信じる。
2024.5.18
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