この世を彷徨うのはあまりにも哀しい。[688/1000]

皮膚は泥と鼠病に蝕まれ、蛆虫は一面に頭髪や腋の下を這い、大きい奴は心臓に這い込み、年も情も弁えぬ、見知らぬ人の唯中に、横わる俺の姿がまた見える、……俺はそうして死んでいたのかもしれない、ああ、むごたらしい事を考える。俺は悲惨を憎悪する。

ランボオ「地獄の季節」

忘却と熱狂の渦へ。他国のせいとは言うまい。力の土壌を奪い取り、無力の土壌を植え付けたとも。今では自ら望んで魂を殺し、自ら進んでお道化るようになった。自己を欺くために借り物の正義を掲げて。ついには、熱狂に身を包んでいなければ、形を保つことのできないほど脆い幸福を、虐げずにはいられなくなった。冷めたい太陽に直視されることを怖れ、科学の矛盾も、歴史の矛盾も、ほれ安逸によって葬られた。英霊に、いや、運命に抗った奴隷たちにさえ、どう顔向けしたらいいのだろう。慰められるほど醜くなる女。男は皮削がれ背骨をもがれ剥製となった。俺は悲観に支配される。救われようのない人間の性。ああ、忘却に身を委ねられたら。この世を彷徨うのはあまりにも哀しい。

 

2024.5.7

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