この世でうまくいかぬとき、そりゃ不貞腐れたくもなる。仰げ。そこらで飼いならされる犬たちを。健気に尻尾を左右に振り、愛想よく尽くしていれば、褒美の餌にもありつける。俺はゴミを漁る野良犬どもが憐れでしかたがない。運命に殴られ、世渡りに敗れた負け犬たち。常に腹を空かせ、泥水を被っても、めげずに地を這うお前らの無邪気には、まったく涙が出そうになる。だが、案ずるな。お前たちはずっと神に祝福された存在だ。見よ、己の鮮血を。それが何より神に与えられた力の証だ。
不貞腐れるのはやめだ。この世に帰る場所がないと思うとき、お前たちを見れば、この這いつくばる大地こそ、我が家だと思い出す。俺たちはここで、ただ地を這うために生きる。高尚な目的など必要ない。立派な目標も捨ててやれ。そんなもの、生きることに比べたら、あまりにも取るに足らぬ、どうでもいいことだ。俺は「生」の第一の側近でありたい。俺たちは生きている。地を這って生きている。これ以上、何を道化る必要があろう。底は暗いが、力に満つ。
神よ、わが愛する唯一のものよ、わが魂の陥った
この暗い深淵の底に在って、み情けを乞い奉る。
ここは見渡す限り鉛に鎖された寒々とした世界、
夜もすがら漂うは畏怖と冒涜。
ボードレール「悪の華」
2024.4.14
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