知りもしなくていいことを知って身を疲弊させるくらいなら[643/1000]
風はどこからやってきて、どこへと去ってゆくのだろう。春のつめたい息吹が、ねぐらから顔を出す動物をおちょくっている。暗い土壌の下では草木が芽吹きの支度をととのえて、天井を突き破り燦々とかがやく陽光を浴びる日を、今か今かと心…
風はどこからやってきて、どこへと去ってゆくのだろう。春のつめたい息吹が、ねぐらから顔を出す動物をおちょくっている。暗い土壌の下では草木が芽吹きの支度をととのえて、天井を突き破り燦々とかがやく陽光を浴びる日を、今か今かと心…
一〇 蓋 暑い国、寒い国、海の上、陸の上、 何処にいようと、 キリストの下僕だろうと、ヴィナスの下臣だろうと、 むさくるしい乞食だろうと、緋衣の富豪だろうと、 都会人だろうと、田舎ものだろうと…
海外を旅していると「お前はどこの国の人間だ」とよく聞かれる。私は「ジャパン」と答えるが、ジャパンと言葉にするたびに、果たして俺は日本人を名乗る資格があるだろうかと頭を悩ませてきた。無論、私は生れも育ちも日本である。日本の…
自分が自分を赦す存在になることよりも、人間を赦す大きな存在のもとに生きるほうがずっと大事ではなかろうか。 仮に自分で自分を赦したとて、原罪が消えるわけではない。涅槃に到達するわけでもない。欲望の炎は臓腑を焼きつづける。非…
国のために働くことと、社会や地域のために働くことは似ているようで別物である。国のために働くことは「義」であり、社会や地域のために働くことは「愛」である。今日「社会のため」「地域のため」とは言っても、「国のため」と言葉にす…
男は自分の情熱に酔い、女は男の情熱に酔う。男がいなくなれば、女は自分の情熱に酔うしかないのである。ゆえに男は男でありつづけるために、己の情熱に責任を持たなければならない。男にとって人生とは女である。女から発せられる魅惑に…
インドから帰ってきた私とすれ違いざまに、母がタイに旅に出た。旅とはいっても、1泊1000円を惜しむような貧乏な私とは違った裕福な旅行である。また、生活に根を張らないただの放浪者とは違った、まっとうな生活の上に伸びていく旅…
爽やかな早朝に、10R(17円)の硬貨を1枚渡し、熱々のチャイを飲むのが、インド旅の楽しみの一つであった。昼は150R(255円)もあれば、十分なマサラとチャパティ(カレーとナンのようなもの)にありつくことができたが、少…
つい昨日、インドの旅から帰ってきた。インド初日で2000ルピーをトゥクトゥクにぼったくられ、人に聞いても欲しい情報が得られず、たらいまわしにされたものの、素朴で野蛮なインド人の感覚に触れて、生命的にほんとうだと思った。彼…
インド旅を終えて日本に帰ってきた。ずいぶん長いこと向こうにいた感覚であるが、友に帰還を伝えると「もう帰ってきたんだね」と返事がきた。私にとっては1ヵ月の重みがずっしりとある今回の旅も、現実時間のカレンダーでは2週間にも及…