兆し[702/1000]
明るい休息だ、熱もなく、疲れもなく、寝台の上に、草原の上に。 友は、烈しくもなく、弱くもなく。友よ。 愛人は苦しめもせず、苦しめられもせず愛人よ。 尋ね歩く仔細もない空気とこの世と。生活。 ―では、やっぱりこれだったのか…
明るい休息だ、熱もなく、疲れもなく、寝台の上に、草原の上に。 友は、烈しくもなく、弱くもなく。友よ。 愛人は苦しめもせず、苦しめられもせず愛人よ。 尋ね歩く仔細もない空気とこの世と。生活。 ―では、やっぱりこれだったのか…
この世の未練、土への渇望、少年の夢、生に息づくあらゆるものが欠けていく。何も食わぬ日はつづく。だが餓死したところで、無為な日々よりましであろう。死も黙らせた武士の気概を、口にするのも怖ろしい。食えねば餓死、食わねば精進。…
見飽きた。夢は、どんな風にでも在る。 持ち飽きた。明けても暮れても、いつみても、街々の喧騒だ。 知り飽きた。差し押さえをくらった命。―ああ、『たわ言』と『まぼろし』の群れ。 出発だ、新しい情と響きとへ。 ランボオ「飾画」…
前世紀には俺は誰だったか。今在る俺が見えるだけだ。もはや放浪もなくなった。あてどのない戦もなくなった。劣等人種はすべてを覆った。―いわゆる民衆を、理性を、国家を、科学を。 ランボオ「地獄の季節」 風はいつも涙を誘い、罪の…
ああ、妾は苦しい、妾はわめきます、妾はほんとに苦しいのです。でも、世間で一番さもしい人達の侮蔑を、背負い切れぬほど背負ったこの妾に、もう何もこわがる事はない筈です。 ランボオ「地獄の季節」 生きる苦労は涙に還り、いつかは…
お赦し下さい、天に在す『主』よ、お赦し下さい。お赦し下さい。お赦し下さいお願いです。涙が出て仕方がありません。ああこののちも、もっともっと涙を流すことが出来ますように。 ランボオ「地獄の季節」 ああ、純潔よ、お前だけは泣…
観客のない見世物屋 一人演じる道化の涙 ああ、なんたる痴態 言葉の刃物が胸を刺す 時代錯誤の痛みと悲哀 千の孤独に放られて 赤い空に手を伸ばす 森を抜ける風だけが 人の無邪気を知るようだ 己は望む 慎ましい生活を &nb…
もう秋か。―それにしても、何故に、永遠の太陽を惜しむのか、俺たちはきよらかな光の発見に心ざす身ではないのか ランボオ「地獄の季節」 なぜシャバにいるのだろう。なぜこの身は、監獄に捕らわれていないのだろう。身体は縛られず、…
生命の『王たち』、三人の導士、心と魂と霊とは、静まり返り、同じ沙漠から同じ夜へと、俺の疲れた眼は、いつも銀色の星の下で目覚めている。砂浜を越え、山を越え、新しい仕事、新しい叡智、僭主と悪魔との退散、妄信への終焉を謳うため…
折れても構わん。挫けてもよい。大いに泣け。何度も駄目になるのなら、何度でもやり直せ。己の罪を嘆くより、罪を嘆いて無為に過ごすほうが、よっぽど罪が重いであろう。俺たちの無邪気を、素朴を、力を、悪意のために手放すな。堕落者よ…