日本には”自然”という言葉は存在しなかった。②[937/1000]
私たちは、人間の手の入らない「原生自然」を一番価値のあるものだと考えている。また人為は、自然と対極にあるものだと位置づけている。しかし、これは明治時代に生まれた「誤解(新しい定義)」なのである。 宇根豊「国民のための百姓…
私たちは、人間の手の入らない「原生自然」を一番価値のあるものだと考えている。また人為は、自然と対極にあるものだと位置づけている。しかし、これは明治時代に生まれた「誤解(新しい定義)」なのである。 宇根豊「国民のための百姓…
この冬、氷餅の仕事をしている。数日かけて凍らせた餅を、木の竿に干していく仕事である。何もむずかしいことはない。誰だってできる、替えのきく肉体労働である。肉体を働かせ、対価として賃金を得ている。冬が終われば仕事はなくなる。…
氷点下11度。寒さのせいか頭痛がする。血管が収縮し血流が滞ったか。そういや昨晩も、寒くてよく眠れなかった。風呂屋に行こうとしたが、道が凍っていたので諦めた。この機会だ。熱々の玄米粥をつくることにした。お粥はいい。凝縮され…
小寒。ついに氷点下10度をむかえた。手が冷たくてしょうがない。幸い、ちょうど焼杉を焼いているところなので、炎に当たりながら仕事ができるのが救いである。杉を焼くのは、全行程のなかでも、一二を競うほど楽しい仕事だ。下手くそで…
悲しみは分断によって生じる感情である。個と個が分断して生きる時代、社会の根底は悲しみに満たされている。ちいさなテレビを大勢の人間が囲った時代と異なり、娯楽までもが個別化する今日は、楽しいや嬉しいといった感情はどれもが二次…
正月はご馳走に恵まれたが、玄米にかなう食べ物は一つもなかった。そりゃそうだ。私にとっての玄米は、胃袋を満足させるにかぎらず、魂に力を与える命の源流でもある。すき焼きも刺身も、そりゃ美味いが、所詮は肉体レベルの話だ。魂を主…
江戸の頃まで、日本には”自然”という言葉は存在しなかった。山も川も、草木も空も、美しい自然は当たり前のように存在し、自己もまた自然の一部であった。”自然”という言葉は、文明…
真っ白な雪が降っている。寒空のしたを風に運ばれて、真っ白な雪が大地を覆ってゆく。四季を感じる機会はずっと減ってしまったが、自然から養われる情感こそ、日本人の魂に愛を供給していたにちがいないと感じる。寒くとも、寒くとも、耐…
世相が移ろい、時代に後れを取る。老いぼれ爺になろうとも、山間を無邪気に駆け抜ける、天狗のような風でいられたら。道徳が論じられ、説教がよく流行る。それでも一途な、詩のままであれたら。すくっても指の間から落ちてゆく、清らかな…
あなたがたが、せめて動物として完全であったら、とわたしは思う!だが、動物であるためには、無邪気であることが必要だ。 わたしはあなたがたに、官能を殺せとすすめるだろうか?いや、わたしは官能の無邪気さを知れとすすめる。 わた…