この世を彷徨うのはあまりにも哀しい。[688/1000]
皮膚は泥と鼠病に蝕まれ、蛆虫は一面に頭髪や腋の下を這い、大きい奴は心臓に這い込み、年も情も弁えぬ、見知らぬ人の唯中に、横わる俺の姿がまた見える、……俺はそうして死んでいたのかもしれない、ああ、むごたらしい事を考える。俺は…
皮膚は泥と鼠病に蝕まれ、蛆虫は一面に頭髪や腋の下を這い、大きい奴は心臓に這い込み、年も情も弁えぬ、見知らぬ人の唯中に、横わる俺の姿がまた見える、……俺はそうして死んでいたのかもしれない、ああ、むごたらしい事を考える。俺は…
眼は燃え、血は歌い、骨はふくれ、涙と赤い神経の網は晃めく。その嘲弄と恐怖とは、一瞬と思えば、また、幾月も幾月もうち続く。 この野性の道化の鍵は、唯、俺一人が握っている。 ランボオ「飾画」 眠りは破壊された脳髄を再生し強化…
麻酔打たれ、機嫌に好かれ。善良な顔をして、毒散らし草枯らす、人間の王国に進歩の奴隷として仕える様は、おおなんとご立派か。ある者は金のため、ある者は無智のため、魂は草の悲鳴とともに搔き消され、無血の惨事は日曜のありきたりの…
放蕩はまさしく愚劣である。悪徳は愚劣である。腐肉は遠くへうっちゃるがいい。だが、時計が、この純潔な苦悩の時を告げて、止まってしまうわけはなかろう。 ランボオ「地獄の季節」 泥を食い、借り物の鎧を誇り、偽善をこよなく愛し、…
そうだとも、俺は貴様らの光には眼を閉じて来た。いかにも俺は獣物だ、黒ん坊だ。だが、俺は救われないとも限らない。貴様らこそいかさまの黒ん坊じゃないか、気違いじみた残忍な貪欲な貴様らこそ。 ランボオ「地獄の季節」 忘却の雨が…
秋だ。俺たちの舟は、動かぬ霧の中を、纜を解いて、悲惨の港を目指し、焔と泥のしみついた空を負う巨きな街を目指して舳先をまわす。ああ、腐った襤褸、雨にうたれたパン、泥酔よ、俺を磔刑にした幾千の愛欲よ。 ランボオ「地獄の季節」…
ああ、遂に、幸福だ、理智だ、俺は天から青空を取除いた。青空などは暗いのだ。俺は自然の光の金色の火花を散らして生きた。歓喜のあまり、俺は出来るだけ道化た、錯乱した表現を選んだ。 ランボオ「地獄の季節」 ああ、陽が沈む。真赤…
ああ、また、生活へ攀じて行くのか、俺達の醜さに眼を据えるのか。この毒、この口づけ、重ね重ねも呪わしい。この身の弱さと、この世の辛さ。ああ神様、お情けだ、この身を匿い給え、俺にはどうにも扱えない。 ランボオ「地獄の季節」 …
一度はこの俺にも、物語を想い、英雄を想い、幸運に満ち満ちて、黄金の紙に物書いた、―愛らしい少年の日がなかったろうか。何の罪、何の過ちがあって、俺は今日の日の衰弱を手に入れたのか。 ランボオ「地獄の季節」 思えば、俺の少年…
俺の命は擦り切れた。さあ、皆んなで誤魔化そう、のらくらしよう、何というざまだ。戯れながら暮らして行こう、きっ怪な愛を夢みたり、幻の世を夢みたり、不平を言ったり、辻芸人とか乞食とか芸術家とか盗賊とか、さては坊主とか、様々な…