お前に足りないのは孤独だ。②[415/1000]

型にはまらないという型にはまることは、度々起こりうる。型にはまりつづける強さを持たない。しかし、型にはまらなければ生きていけない。そんな弱さと弱さの狭間に、型にはまらないという型にはまる、という現象がおきる。言うまでもなく、これは情けないことである。

最初に型から外れるのは、堕落であることが大半だ。私のような凡人には、非凡な人間のことは分からない。しかし、弱い人間が直面する、堕落の苦しみはよく知っている。今日、堕落という言葉は死語である。”多様性”というまやかしのもとに、どんな人間も生まれながらにすばらしいというのが流行りである。多様性のもと、堕落の概念は消失し、堕落によって生じる孤独と苦悩もなくなった。

結果、型にはまらないという型にはまることが起こるようになった。坂口安吾は、堕落するのが人間であるという。堕落してしまうのが人間の弱さであり、それは仕方のないことである。堕落した人間は、孤独である。孤独のなかで、自己の生命の形を掴む。それからが、勝負であるのだ。社会のはみ出し者になってもいい。現世の人間と馴染めなくてもいい。しかし、堕落してからは、脇目をふらず、天との関係に自己を置いて、真の孤独を貫いてみよというのだ。

ここでも、何度も何度も弾かれる。社会から弾かれることはなくなっても、今度は天から弾かれる。これに耐えきれない人間は、天に中指を立て、神に死ねといい放ち、悪党となって地獄の道を進むことになる。そんな人間はクソ野郎であるが、クソ野郎になるには強さがいるのであるし、そこに魂があるかぎりはまだ人間であると言えるのである。

お前に足りないのは孤独だ。寂しいなら天を仰げ。月と語れ。海に行け。嵐を両手で抱いてみよ。くだらない電子機器にうつつを抜かしていないで、もっと本にぶちあたれ。そして、同じように生きた偉人たちの魂を掴み取れ。真の孤独は、一人であって一人でないのだ。宇宙に広がる星の数ほどの祖先と繋がり、現世を生きながら、過去と未来とも一つになるのだ。お前に足りないのは孤独だ。純粋な純粋な、真の孤独だ。

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