妙高高原に住まわれる、Uさんご夫婦に泊めていただいた。
温かいお茶、温かい湯船、温かいお米、温かいキスの天ぷら、エビの出汁を使った温かい味噌汁、温かい団らん、温かい布団、温かい笑顔、温かいお人柄、
何もかも、すべてが温かかった。
家は温かいもので、温かさあっての家だなぁと改めて感じた。
そして人は家に帰っているようで、厳密には「温かさの中に帰っていく」のだと思った。温かさこそが「心の家」だ。
前日まで孤独死しそうだと発狂していた私は、温かさを失っていた。何なら、冷えっ冷えだった。
自分が自分の中に、温かさを見つけられないとき、人は自分の中に帰る場所を失う。
死にたくなる時、苦しい時、どうしようもなくなる時、誰かと比較して今を生きられなくなる時、孤独に押しつぶされそうになる時、
大体私たちは、心身共に、冷えている。
暑いと温かいも違う。
昼間暑いと感じていても、実は外面が火照っているだけで、中身が冷えていることもある。湯船に浸かると身体の芯が冷えていたことに気づく経験をした人は多いと思う。
身体が温かさを失っているときは、自分の中に再生される言葉は冷たくなる。ギラつく太陽に「アツイッ!!」と死にかけているときも、言葉は冷えている。
どうしようもない時は、まずは物理的に自分を温めることだと思う。
ホッとできるような、温かい飲み物を飲もう。温かい湯船に浸かろう。温かい味噌汁を作って、温かいご飯を食べよう。そして、身体の内側が、温まるのを感じよう。
私はよく、温かい汁物をそそると、一気に緊張がほぐれて、心がとっても温まる。エビの出汁のきいた味噌汁をすすった時も、思わず「うんめぇ~」と笑みがこぼれた。太陽にギラついていた時とは対照的に、この言葉には温かさがある。
冷えてる時の、汁物はおすすめだよ。身だけじゃなくて、心にもちゃんと染みてくれるんだ。
私たちの身体が帰る場所は、賃貸や一軒家みたいな、屋根と壁のついた家かもしれないけれど、私たちの心の家は、いまこの瞬間の、私たちの中にある。
家にいても一人寂しい思いをしている時は、身体は家にあっても、心はまだ外出中だ。心を家に帰らせてやろう。ドアを開けてやろう。「おかえり」と迎え入れてやろう。それでも帰ってこれた気がしないなら、心がさ迷っている場所まで、探しに行ってやろう。
私たち一人ひとりが、自分の心の家主なんだ。
Uさんご夫妻との時間は、まるで父と母と過ごしているような時間だった。
自給自足の拠点を作りたくて、Uさんご夫婦に会う前に、隣の信濃町にある空き家を見に行ったことを伝えた。
「ここはとても静かで、畑が4つもついていて、家の裏が山林になっていて、家の中には廃材があるけれど、50万で売ってるんだ!」
と私が興奮気味に見に行った空き家の写真を見せると、「やめときなさい。むしろ50万もらいなさい」と2人に即答され、思わず笑ってしまった。
話を聞くと、この辺りは雪が4m近く積もるので、毎年、除雪をするのに、かなりの労力と財力を費やす必要があるとのことだった。除雪を怠ると、雪の重みで家が潰れてしまうので、もし家を買うなら、相当の覚悟がないと後々苦労するということらしい。ちなみに、除雪機は、車を買うのと同じくらい高い。
この他にも、日本有数の雪国ならではの苦労をたくさん聞いた。4mも積もれば、雪を「捨てる場所」が必要になる。雪なんかその辺に適当にどければいいんじゃないか?みたいに、非雪国出身の僕は思ったのだけれど、隣人の土地や、他人の山林に捨てれば、トラブルの種になるという。たしかに雪が原因で、屋根が壊れちゃうみたいな話になれば、それは死活問題になりかねない。
4mの積雪は、これまでの常識が通用しないことばかりだ。そもそも4m積もるというのが、笑っちゃうくらい想像できない。
雪が降った時の写真を見させてもらったが、日本とは全くの別世界だった。大変だよ~大変だよ~、というUさんご夫妻の話にうなずきながら、そんな雪世界に、私は猛烈にワクワクしていた。
Uさんご夫婦に「やめなさい」と一刀両断されたとき、不思議と嫌な感じはしなかった。それはきっと親心を感じたからだと思う。
夢とか、やりたいこととかの話になると、「やめときなさい」みたいな否定的な意見が、絶対悪みたいに扱われる。しかし、無責任に「やってみればいいじゃん」と言い放たれるより、親身になって「やめときなさい」みたいに言ってくれるほうが、私は元気になる。
元気になれば、人は勝手に動くし、元気がなければ行動するにもガス欠を起こす。
「その家はやめときなさい」というUさんご夫婦の言葉は、体温があった。温かくて背中を押された気持ちになった。
何を言うかよりも、どれほどの温かみで言葉を伝えるかのほうが、ずっと大事かもしれない。
色々話を聞いていく中で、空き家がそこら中に溢れてて、維持が大変で抱えているだけで皆困ってるという現状に対して、お金を払うという前提をそもそも疑う必要があると感じた。
0円で譲ってもらうには、こうやって人づてから探っていく必要があるかもしれないけれど、そんなアナログなやり方も体温があって私は好きだ。
翌日は、旦那さんのMさんに、車で町を案内してもらい、ワラビを採ったり、星空が綺麗に見えるという山中に位置する0円露天風呂を案内してもらったりした。
山に、海に、湖に、川に、池に、露天風呂!豪雪もすごいが、ここには「本物」があると思った!
…..この話は書くととっても長くなりそうなので、また今度!
冷え冷えの状態から、Uさんご夫婦に触れて、体温を取り戻して元気になった私でした!
暑い日はまだまだ続くけど、冷たいものもほどほどに、身体をちゃんと温かくして過ごしてね!
そして身体だけじゃなく、心もちゃんと家に迎え入れてやるのだぞ~!
じゃ、また明日!ばいばい!
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